ジェイドはエンゲーブの村長であるローズさんの家へと赴いた。そこで親書を貰うらしい。陛下が忘れていなければ、の話だが…もの凄く不安である。イオンは食料泥棒の話を聞き付けてこっそり逃走、アニスはそれを追いかけていった。……私?私は――――
「お客さん!!金、金!!」
「へ?」
市場を中心にルークとティアを探し歩いていた。さすが食料の村というだけあって、沢山の露店の食材屋とそれを目当てに来た人々で辺りは賑やかだった。それでもこの中でやはり燃え上がるような赤は目立っていた。
「(…居たっ)」
「え?金がいるの?俺が払うの?なんで?じゃあ屋敷に言ってもらっといてくれや」
「はぁ!?ちょっと待ておまえ!!」
「あっ、おじさん!はいこれりんご代です!」
私は慌ててポケットからガルドを取り出しておじさんの手のひらに押し付けた。ポカンとする3人、お代を受けとったおじさんはそれで納得したのか他の客を呼び込もうと向こう側を向いた。ホッとしたのもつかの間、私は身体が浮くのと首元が絞まるのを感じた。
「ぐへっ!」
「てめっ、何勝手にやってんだよ!」
「止めなさいルーク!彼女は代わりに払ってくれたのよ!?あなた、あのまま捕まっても良かったの?」
「!!っち…」
ティアの言葉に、ルークは手の力を緩めて私を地面に落とした。お尻にくる激痛に堪えていると目の前に手が差し出された。
「ごめんなさいね…私はティア、あなたは?」
「…クロエ、クロエ・アマネです」
「よろしくねクロエ。彼はルーク…悪い人ではないのだけど……」
「うっせーな!ほら、早く宿屋に行こうぜ」
目を合わさないままぷんすかと怒りながら彼はずんずん前へと進んだ。ティアは肩を竦めながら私の手を引いてきた。
「クロエも一緒にこない?」
「えっ、私は他に―「俺が泥棒だっていうのかよ!?ふざけんなおいティアクロエ説明してやれよ!!!」………一緒に行きます」
「…助かるわ」
結局やはりルークは泥棒扱いされてしまった。確実に原作通り、進んでいる。ため息をついた私たちは担がれていくルークの後を追うようにしてローズさんの家に向かった。……あれ、何か忘れてるような…。