私は、なぜツナを選んだんだろう。時たまそう思う時がある。なぜ、と言われると困る。大好きだった人を知ってる、と言えば簡単かもしれない。そう、私以外にお兄ちゃんをよく知ってるのはツナ、だけ。
だから目の前で凄く可愛い女の子がツナに猛アタックしてるのをみて苛ついてるのは、きっと彼氏を誘惑するなという形式的な感情。
「ツナ君、今日はお家に行っていいかな?」
「え、あー…ごめんね京子ちゃん、俺は美々を今日呼ぶつもりなんだ…」
「じゃあ一緒に行っていい?ホラ、そこに彼女サンもいるし」
大きな瞳をツナから私に向ける女の子。でも可愛らしさ、というよりは貪欲なギラギラした視線を私に投げ飛ばしてきた。あ、そっかこの子はツナの事が好きなんだ。
「ねぇ私、笹川京子!貴女は…?」
「私は雨音美々よ…ツナの友達?」
そう聞くと言葉を詰まらせ、顔を歪ませた。丁度ツナからは見れない位置で、私を睨む。そこから小さく口を開く。可愛らしく首をかしげながら。
「ねぇ、私も一緒にツナ君の家に行っていいかな?」
「…………ごめん、2人で過ごしたいから…」
「!」
京子ちゃんはさらに顔を強ばらせて、私に口パクで「何よ、貴女…」と言った。それからツナの方を振り返ってにこやかに「じゃあ今度お邪魔するね」と手を振りながら教室へと戻っていった。私たちの間に流れる微妙な雰囲気。それを最初に破ったのはツナだった。
「……ごめんね、京子ちゃんは中学で仲が良かった子なんだ」
「や、やだツナっ!私、妬いてないからね?」
でもその言葉が逆に私が妬いている事を表してる…よね。クスリとツナは笑った。
「ばーか、知ってるよ」
ドキッとした、なんて言ってやんないんだから。