目の前で倒れるお兄ちゃん。ふわりと赤が飛ぶ。それでも私を抱きしめる力を弱めずに、銃を持った黒い人から隠した。私はすぐに暗殺者がここを嗅ぎ付けたんだと幼い頭ながらも察知した。
目の前で命の灯が消えてゆくお兄ちゃん。やがて、暗殺者も消えて人が来たころには身体は冷たくなっていた。
「お、にいちゃ、ん…?」
初めて死を目の当たりにして私はただお兄ちゃん、たくやお兄ちゃん、と呼び掛ける事しかできなかった。
まだ、お兄ちゃんは生きてるはず、どこかでそう思っている自分がいた。
「美々、逃げるわよ」
「母様、たくやお兄ちゃんはどうなったの…父様はまだ?」
「……っ」
何も言わずただ涙を流して私を抱きしめる母。そして私たちは並盛を去った。