「嫌っ!離して兄さん!」

「なーに言ってんの、お風呂ぐらい昔は一緒に入ったじゃないか真白」


あの後自家用と思われる飛行機に乗せられイタリアに着いた私を待っていたのは、パフィオペディラムと呼ばれるミルフィオーレの本部タワーだった。私は最上階の白蘭兄さんの自室と思われる部屋のお風呂に無理矢理連れてこられた。勿論、暴れる。きっと兄さんがする事は1つ―――。


「ほら、髪の色を戻すだけだからさー」

「それが、嫌なのよ!」


私と兄さんはよく似ていた。だから逃げる時にもバレないよう、兄さんと正反対になりたくて黒く染めたのに、これでは意味がない。兄さんの手には透明な液体が入った瓶。


「やめてよ…っ、嫌だって!!」


手足をバタバタさせて抵抗してみるも、男の人の力にはかなわない。すぐに両手を上に上げられひとまとめにされてしまった。しかも片手で。器用に瓶の蓋を開け、中身を私の頭上にぶちまけた。ぬめる液体が頭から顔にも伝いかかった、………気持ち悪い。吐き気がする私になんか気付かずシャワーのコックが開かれる。服を着たままなのに…。頭上から今度は熱いお湯が流れてきた。服が身体にまとわりつく。視線が私の身体を貫き通すんじゃないかと言うほど強くなる。髪の色が落ちているのか、黒い水が床に広がる。キュッとコックを戻す音が湯煙の浴室の中に響く。白蘭兄さんが微笑む。両手が頬を包み無理矢理上を向かされる。


「ほーら真白、綺麗な白だよ……僕とお揃いだね」


浴室に取り付けられた鏡に映る私は、白蘭兄さんと瓜二つだった。ポタリと水滴が床に落ちた。黒い水溜まりに、2つの水滴。



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