月夜に白が駆けた。
その右手からは目にも見えぬスピードで何かが投げられた。白の目の前には黒装束の人―――否暗殺者とも呼ばれる者が、走って、白から逃げていた。
グサッ。
「ぐっ、ぐわぁあぁあっ、…あ、あぁ…っ」
背中に深々と突き刺さった短剣には速効性毒が仕込まれているのか、すぐに暗殺者の顔色は悪化していった。
それにもお構いなしに、腰に収めてあった長刀を右手に、白い長髪の者は、更に痛めつける。鮮血が飛び散り、とあるイタリアの路地裏には鉄錆の臭いと赤が辺りを支配した。
「な、お前は…な、ぜ…ミルフィ、オーレの…」
そこで暗殺者は力絶えた。それでも血はドクリとそのまだ少し温かい身体から流れ出る。その背中から短刀を抜くと、"彼女"は笑った。
闇夜は、素顔を隠したまま。
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