とうとう明日がお別れの日になってしまった。カルディアは昨日から散々私を抱いた後、ひたすら私を抱きしめていた。朝の少し冷たい光が窓から溢れて綺麗なカルディアの青い髪をキラキラと輝かせていた。 「…カルディア、朝ごはんにしよ?」 「………もう少し」 「それ、5回目だよ」 苦笑を浮かべペシンと頭を叩いた。少し緩んだ腕からスルリと抜け出し素っ裸ではあれなので下着とワンピースを着るとキッチンに急いだ。準備をしているとスラックスを穿いたカルディアが不機嫌そうに寝室から出てきた。ドンドンと歩く音を注意しようとすると背中からぎゅううとまた抱きしめてきた。 「離れて」 「い や だ」 「…動きにくいんだけど」 「知るか」 軽く殺意を覚えた。こっちは身体が怠いのに支度してるのに…! 「カルディア…」 「カレン…」 近付く顔、頬が熱くなるのを感じた。目を閉じて―― ガンッ! 「ってー!!なにすんだカレンっ!!」 「邪魔って言ってんでしょ!?」 私の頭突きは相当痛かったらしい。目に涙を浮かべてぐちぐち文句を言いながらも退散していくカルディアに笑ってしまった。…本当に、単純だなあ。そこが良いところでもあるんだけどね。 「ほら、食べて!今日も一緒に出かけるんだから!」 「…おう」 もそもそとトーストを食べはじめるカルディアを横目に温めの甘い紅茶を啜った。…うん、甘い。よし、私もサラダくらいは食べなきゃ。 *** この温もりを忘れたくなかった。これが最後の夜、そう思うと身体がカレンを求めた。あいつも珍しく文句も言わずに手を差し延べてきてくれた。 「………」 ぐっすりと眠るカレンの顔をずっと見つめていた。いくら見ても見飽きなかった。ずっと、ずっとずっと見ていたかった。一緒に暮らして、話して笑って泣いて怒って、子供なんかも作っちゃって、子供溺愛しちゃって、年とったらまた世界を、今度はゆっくり旅行して、それから、それから―――――。 嗚呼、こんなにも一緒にやりたいことを残していたのか。 「…ったく、情けねぇよな……」 今更、生きたいだなんて、な。 |