透明な口実



「どうしたのミロ?」
「………」



ミロから呼び出されカルディアと旅行先のスウェーデンから急遽一瞬アテネに帰国(元とはいえ黄金聖闘士、力は劣ってなく一瞬で国境越えだ)した。高速移動が苦手な私をカルディアはここぞとばかりに抱きしめている。不機嫌そうに顔をしかめたミロは私にずっとくっついていたカルディアをペリッと引きはがしカレンと2人だけにしろと一言言ってから宮のプライベートルームに私を押し込んだ。ここで冒頭に至る。

「…いや、もうすぐ…」
「嗚呼カルディアのこと?大丈夫、今たくさん思い出作っ」
「違う、お前のことだ」

真剣なミロの青く透き通った瞳、あー…気付いてたのか。本当に聡い子なんだから。困ったように笑みを浮かべると泣きそうな顔で私を引っ張り腕の中へと強制収容された。

「…俺はお前のことが、好きだった」
「うん」
「本当なら…いいや、なんでもない」

何か言いかけたが止めてしまった。首を傾げる促すが教えてはくれなかった。ガシガシと頭を撫でられた。

昔は私がミロの豊かな髪をぐちゃぐちゃにしていた。今では私よりも背は高くなり、頼りになる男性へと成長した。

「…お土産、楽しみにしててね」
「林檎も忘れるな」

思わず吹き出してしまった。



***

カルディアからは何の話だったんだと問いただされたが笑ってごまかした。キスをすれば一瞬でそんなことを忘れ満足そうに微笑んだ。

「今度は何処に行こうか」
「今度はアジアがいいな」
「りょーかい」

意地悪そうな笑みを浮かべカルディアは私を抱き抱えた。え、と言う間もなく一瞬で周りが高速に動き始めた。

「ぎゃああああああああああああああああああぁあ!!!!!!」