赤い嗚咽


任務から帰還してきたミロは楽しそうに話をしているカレンとカルディアを見つけた。あーあ、仲直りしちゃったのか。


本当は分かっていた。俺なんかよりも、二百年以上も想っていたあいつに軍配があがることくらい。カミュに付き合ってもらい酒を飲みながら愚痴ってみた。

「…それは、親代わりのようだったカレンを取られたくない、と思っているだけなのではないか?」

何も言えなかった。確かにあいつは天涯孤独な俺が黄金聖闘士になる前から気にかけてくれていた。天蠍宮を預かってから間もなくカレンは天蠍宮専属の女官になってくれた。いつも優しい笑顔で見守ってくれた。やんちゃばかりしている俺を叱り、心配してくれた。…あぁ、この感情は敬愛、親への気持ちだったのか…?でも、彼女を想いながら愛してる、という言葉を言ってみるとしっくりくる。

「…そういう、ことじゃ…ないと思うのだが」
「私にはそうにしか見えない、まるで母親を取られるのが嫌な子供のようだ」

ったく、大の大人を子供扱いかよ…。カミュの言葉に苛立ちながらもぐいっと酒を煽った。

「…なぁ、」
「どうした」
「今日は最後まで付き合えよ」
「…今日だけだぞ」

不敵な笑みを浮かべたカミュに感謝しながらグラスを少し上げた。納得顔のカミュもグラスを上げた。チン、とグラスの響いた音が天蠍宮で鳴った。