「え、今月末に…?」 「えぇ、デスマスクの積尸気冥界波であちらに送ります…これがどういう事だか、分かりますね」 「わかってる、」 アテナからの言葉にカルディアはヘラッと笑ってその場を後にした。同席していたアイオロスは憤慨した。 「アテナ様に向かいなんて無礼なんだ…!」 「良いのです、彼は死に直面しているのですよ?」 「そ、れはそうですが…」 「それも神に振り回されて、ですよ?同じ神たる私に彼をとやかく言う資格なんてありません」 そう言われてはアイオロスは何も言えなかった。同じく同席していた教皇シオンは頭を抱えたくなった。 「カルディア…」 *** あんな話をされた後だ。気分転換に外に出たかった。それだけなはずなのになんで雑兵たちに囲まれてるんだ…?ちらほらと聖衣を纏った奴もいる。共通するのはカルディアに対する敵対心だった。 「なんなんだ、お前ら」 「っ!お前のせいで死の神が入りこんだんだぞ!!??」 「…はァ?」 「お前が昔の黄金だったなど関係ない!今は聖域の毒に過ぎんのだ!!」 熱く語る彼の身体には銀色に輝く聖衣が纏われていた。…こいつら、俺のことが気に食わないみたいだな。笑える。 「アテナ様の甚大なるお慈悲でここにいるようだが女神がお前に憂う前に消し去ってやる…!」 「くっだらねー」 思わず鼻で笑ってしまった。こいつら、自分たちが祭り上げている女神の意思に反していることにすら気付いてないのか?そんな奴らにスカーレットニードルをぶつけようともカルディアは思わなかった。むしろ死ねばいいんじゃね、とすら思った。あ、でも俺腐っても黄金だったし…簡単にはなァ…死ねないな。カルディアの態度に怒りを抑え切れなくなった兵が拳を振り上げながらカルディアに突進してきた。軽く目をつぶる。だがいくら待っても衝撃は来なかった。むしろ、温かい小宇宙に包まれているようだった。パッと目を開けると地面に倒れ込む雑兵たちがいた。立ち上がろうとした彼らにまた何処からともなく攻撃が降り注がれた。 「聖闘士同士の争い事は赦されてないわ」 久しぶりに聞いた声、あーやっぱこいつのこと好きだわ。振り返ると小宇宙を揺らめかせたカレンが立っていた。 「それに彼のことで貴方たちに口を挟む権利はない、全てはアテナ様に一存されているわ」 「お、まえ…カレンか…!?」 戦う姿を見たことない彼らは目を見開きカレンを凝視した。 「追放される前に立ち去りなさい!」 その言葉に蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。…こんな者たちがアテナを守る聖闘士だと思うと悲しかった。前聖戦の彼らを考えると、本当に悲しかった。 「…なに、してんだよ」 「ごめん、でも…!」 「もう俺に関わんな」 「でも後少ししか時間ないんだよ!?」 その言葉にカルディアは表情を怒りに変えてキッと上のアテナ像を睨みつけた。 「っ、たくあのじゃじゃ馬…」 「…お願い、最期までずっといたいの」 「お前、馬鹿だろ」 今更でしょ?そう言って笑うとくしゃっとカルディアが顔を歪ませた。腕を上げてカルディアを包み込む。肩に彼のおでこが乗っかってきた。擽ったいけどカルディアの熱さが伝わり嬉しかった。珍しく震えるカルディアに、私は一つの決意をした。 「…大好き、カルディア」 「…俺はそれ以上だからな」 |