笑う骨



あの日以来、カルディアは教皇宮に引きこもってしまい会えなくなってしまった。赴こうとも、また拒絶されてしまったらと考えると足を動かすことは出来なかった。広くなった部屋、会話のなくなった部屋、温かみのなくなった部屋、カルディアが、いない。

ミロに天蠍宮に来いと誘われたが断ってしまった。この部屋から離れてしまったらもう終わりな気がしたから。特にすることもなく部屋でぼんやりとしているとチャイムの音が聞こえた。重たい身体を引きずるようにしてドアまで動く、勝手にドアが開き少女が中に入って来た。

「お久しぶりですカレン」
「あ、アテナ…!?」
「ふふ、ここでは沙織と呼んで下さい」

辰巳、と一言言うと後ろに控えていた辰巳さんが手にしていた箱を女神に渡してドアを閉めた。女神はそのままリビングに赴き前まではミロが座っていた席に腰掛けた。

「カレン、紅茶をお願いしてもよろしいかしら」
「…………分かり、ました」
「お茶請けは構いません、こちらでケーキを持ってきましたわ」

微笑む彼女の手には私でも知っているような高級洋菓子店のロゴマークが輝いていた。…さすが、総帥。用意した紅茶を一口啜ってから女神は口を開いた。

「今日私がここに来た理由は分かりますね?」
「…カルディアのことですよね」
「えぇ。困りましたわ…この問題は私一人でどうこうできることではありません。冥王やオリンポスまで関わることですから」

女神として、聖戦に貢献してくれた貴方方には幸せになってもらいたいのですが…、

「世界、宇宙の理を乱しては全てに歪みが生じてしまうのです」
「アテナ…」
「それにカレン、貴女カルディアと何かあったのですか?彼が教皇宮の一室に閉じこもって出てこないのですが」
「……すれ違い、と言いますか…」

ハァ、と女神はため息をついた。なんてタイミングでなのだろうか。彼らには1ヶ月も残されていないのだ。そしてこれが、永遠の別れになるのに。

「早く仲直りなさいな。時間はありませんよ」
「…善処します」

もう一度、沙織はため息をついた。