「カルディア、実は貴方の魂をタナトスが返して欲しいと聖域に乗り込んできました」 「…は?何言ってんだアテナ」 「アテナ様に無礼だぞカルディア!」 「よいのですシオン。どうやら貴方が転生したのは冥界側の不備なようでして…本来人間は前世の記憶を持ったまままた生まれることはできないと掟があるのです」 困りましたわ、とため息をはきながらアテナはニケをきつく握り締めた。カルディアはただ困惑を隠せなかった。自分だけでは決められない、カレンとも相談したい。そうアテナに告げてカルディアは謁見の間を後にした。 「…死ね、ってか」 笑えねぇよ。せっかく二百数十年も時を越えてカレンに会えたのだ。そう簡単には魂をはいどうぞと渡すわけにはいかない。階段を下りながらどう説明しようか悶々と考えていると先に帰っているはずのカレンの小宇宙を感じた。無性に彼女を抱きしめたかった。足が早まる。だがカルディアの目の前でカレンは蠍座のミロに抱きしめられていた。身体が沸騰するんじゃないか、そう思ったほどカッと怒りが上がった。でも、丁度いいのかも、と思った。 例え俺がいなくても、彼女を支えてくれる存在がいる。 なら俺は、彼女を突き放さなければ。冷たい声、涙を流す彼女。あんまり覚えてない、記憶は曖昧だった。教皇宮へと戻る時、老いかけてくる啜り泣く声が重く背中に押しかかってきた。 (ごめん、) |