埋め込む羞恥


二人で暮らし始めてから2週間が経った頃、突然カルディアが教皇宮に呼び出された。不審がるカルディア、そして何故か不安で仕方ないカレンだった。

「まさか…またここで戦えない、ってことじゃないよね…?」
「なら俺、主夫するぜ」
「やれる事をおっしゃい」

ふざけた返答をするカルディアの頭をペシッと叩きカレンは不安げに十二宮を見上げた。嫌な、予感。

「んじゃまあ、いってくるわ」
「何か問題があったらすぐ呼んでね?」

泣きそうな顔のカレンにニヒルな笑みを浮かべながらキスを送るとカルディアは一気に階段を駆け上がった。その後ろ姿を見つめ、消えたところでため息をはきながら一旦ロドリオ村に帰ろうと振り返るとそこに金色が見えた。

「あ…ミロ…」
「……カレン…」
「…?どうかしたのミロ?」

いつもと様子の違うミロに首を傾げながら近寄るとすごい力で引き寄せられた。驚きを隠せなかった。今まで子供だと思って接していたミロがまるで知らない他人、男のようだったから。

「好きだ」
「……え、」
「好きなんだカレン…あいつに渡したくないんだ…っ」

苦しそうに首筋に顔を埋めるミロの背中をそっと撫でてみた。震えていて、やはり子供のように思えた。…ミロを、我が子同然に育ててきたのだ、それ以外になんて見ることはできない。でもそれは彼を傷つける。それでも言わなければ…。

「ミロ、」
「言わないでくれ、出来ればこのままで…」

そう言われては紡げない言葉、そんなカレンとミロに近付く1つの小宇宙。バッとミロが顔を上げて上の宮へと続く階段を睨みつけた。

「…カルディア」
「……どういうことだ?」
「カルディア…っ違うの!これは」
「理由なんてどうでもいい。あ、カレン…お前、天蠍宮に戻れ」

急に突き放してくるカルディアに頭が追い付かなかった。ミロから離れゆっくりカルディアに近付いた。震えが、止まらない。

「どういう…こと?」
「……別に。俺は教皇宮で世話になる、じゃあな」

そのまま触れることが叶わないままカルディアは身を翻してまた階段を駆け上がっていった。取り残されたカレンとミロは何がなんだか分からなかった。

「カルディア…っ…どうして…ヒック…」

呆然と立ち尽くしながら泣くカレンの啜り声だけが響いた。