仮面を取れたらどんなに楽か




あたしは兵士に連れられ謁見の間に連れてこられた。広々とした空間に思わず息をのんだ。ふと視線を感じたのでそれを追うと、何人かのお嬢様が立っていた。あたしもそこに案内される。

「まぁ、また婚約者候補ですのね」
「…貴女方もですか?」
「勿論ですわ。…貴女は社交界でもあまりお見かけしないですね…?」

あ…身体が弱くて…おほほほと引き攣った笑みでごまかした。だって、あたしパーティーとか出てないし。いっつも影武者のメイドを使っていた。今話し掛けてきた人はこの中では親が高い位に就いてる。…なんか、年齢層若いな。ピオニー陛下ってもう30代だよね…?お上品な笑みが響く中にカツン、と靴音が響いた。振り返るとマルクトの海を思わせる青い軍服に身を包んだ男が蜂蜜色の髪をたなびかせてこちらに近付いてきた。赤い瞳がレンズ越しに私たちを見定めているようだった。

「お待たせいたしました。我が主、ピオニー陛下がもうすぐ来ます」
「まぁ!カーティス大佐ではありませんか!」
「父がお世話になっております…」
「今度ぜひ我が屋敷に…」「…貴方が、死霊使い(ネクロマンサー)ジェイド…」

お嬢様たちが次々と媚びるような言葉をかける中、あたしの呟きにチラリと大佐が視線を寄越してきた。…なんだ、今の。そこに大佐より薄い青の軍服をきた真面目そうな男がやってきた。

「…ピオニー陛下は今支度をしていまして、…その、ペットが…」
「またですか…それはメイドに任せてもう本人を連れてきましょう」
「俺ならもういるぞ、ジェイド」
2人の間を突然割って入ってきた人物は一瞬でその場の空気を凍らせた。…え、皇帝って…そんなに軽いの?突然すぎる登場に大佐たちも驚いてる…というか呆れてる。

「陛下…!少し自由すぎます!」
「へーへー。…で、彼女たちが例の?」
「陛下の婚約者候補です」

2人の説明を聞きながらピオニー陛下は玉座に向かった。…あのもう1人の人はフリングス将軍というらしい。隣のお嬢様が興奮しながら私に一方的に話してきた。ファンらしい。よいしょ、と気怠そうに豪勢な玉座に座り見定めるようにあたしたちを見つめる彼の目はすごく綺麗だった。



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