死んだ小指


「それより…これからカルディアはどうするの?」
「あーそうだな…つーか聖衣返せ」
「は?!?この蠍座の黄金聖衣はもう俺が継承したものだ!今更貴様になどにくれるものか!」
「口だけは達者だな…外に出ろ狩ってやるよ」
「上等だ」

一触即発の空気にパシンとカレンが蠍たちの(もふもふした)頭を叩いた。

「ミロはもう子供じゃないんだから落ち着いて!カルディアも今の蠍座は彼なんだから聖衣は諦めて!」
「「ってぇ!何すんだよカレン!!」」

見事にハモる2人、だがカレンに睨まれて引き下がるしかなかった。惚れた弱みである。

「…分かった」
「へーへー」

まだ不満たらたらな2人を鎮めたカレンはアテナの方へ顔を向けた。勿論、カルディアの処遇についてだ。

「アテナ様、カルディアをまた聖域に置いていただけるでしょうか…?」
「勿論ですわ。頼りになる聖闘士が増えて私も心強いです」
「ありがとうございます!」

よかったねカルディア!ぎゅうと首に腕を回し喜ぶカレンに幾分か瞳を緩ませたカルディアはあぁ、と腰を抱きしめた。

「住まいはどうしましょうか…?」
「なっ…!?アテナ!カレンだけは今までと同様に天蠍宮で過ごせばいいではないですか!」
「駄目よミロ、恋人なら一緒に住まなくては」

楽しそうにアテナ、いや沙織は手を合わせ教皇宮を改築しようかと悶々と考えを巡らせていた。ショックで灰になるミロにカミュが優しく背中を叩いてやる。

「なら、ロドリオ村で一軒家を借りましょうか」
「それがいいな(あのガキに邪魔されたくないしな…)」
「!!!?だっ、駄目だああああカレンーーーーーーーーーっ!」

滝のように涙を流しカレンの腰にしがみつくミロ。鼻で笑いながらシッシッと犬をあしらうようにミロを扱うカルディア。

「と、とにかく数日間はこの教皇宮の一部屋をお使いなさい。あとミロ、涙と鼻水をなんとかなさい」

黄金聖闘士あろう者がけしからん!とシオンが説教するが久しぶりに会えた旧友である童虎がいるからか、顔は緩んだままで威厳などない。

「説得力がないですよ、我が師シオンよ」

そんな外野を気にも止めずにカレンとカルディアは楽しそうに家に必要な家具などを相談していた。アイオリアは金聖闘士がこの2人に振り回されていると思うと溜め息しか出てこなかった。

「ある意味、すごい奴らだよな…」
「そうか?いいカップルだと俺は思うよ」

アイオロスのほわわんとした答えにさらに溜め息を吐く実弟のアイオリアであった。