カレンはこの頃不満を募らせていた。ルゴニス先生にも、アルバフィカにも。2人は自分が居ない時にこそこそと何かをやっているようだった。その後決まってアルバフィカが体調を崩してしまい、何なのかを聞きそびれてしまうのだった。その日も臥せているアルバフィカに聞きに部屋に入ったら枕に顔を押し付けている。枕カバーにはべっとり血が付いていた。

「あ、アルバフィカ!!?」
「…うっ、カハッ!……っ、カレン…?」
「喋っちゃ駄目!毒が回ったの?なら毒消し飲まな「止めろ!」…アルバ、フィカ?」
「僕は、大丈夫だから…話は、また明日…ね…」

血で汚れた口元を手で拭いながらアルバフィカはちょっとだけ笑みを浮かべて瞳を閉じてしまった。

「…アルバフィカ」

まるで拒絶されたように思えた。部屋を出るとルゴニス先生が立っていた。先生も少しだけ顔色が悪く、それでもアルバフィカの部屋を見つめていたようだ。

「ルゴニス先生…アルバフィカが…」
「嗚呼知ってるよ。…アルバフィカは今頑張っているんだ」
「っ、2人とも私に隠して何してるんですか?!アルバフィカは死にそうだし先生すら体調悪そうで…っ!」
「大丈夫だからカレンは修ぎ…」

ルゴニスはそこで言葉を止めた。聖域へと引き取った日以来、どんな辛い修行にも泣かずに耐えてみせたカレンの目は真っ赤に充血するほど涙を溢れさせていた。

「先生…アルバフィカ…っ、ひとりに、しないで……」
「カレン……。分かった、やはり話しておこう。だが約束してくれ、例えどんな事が起こってもアルバフィカの傍に居てやってくれ」

そう言ってから先生は赤い絆と呼ばれる2人の血を1滴交換する儀式をやっていると教えてくれた。アルバフィカが毒に染まった先生の血を身体に入れ苦しんでいることも分かった。

それから先生にもアルバフィカの毒の血が回ってきていることも知った。私は衝撃であった。本格的にアルバフィカに黄金聖闘士の修行をさせていたんだ…。薔薇をコントロールして投げる術は勿論、あの毒薔薇の中で暮らす運命を先生は背負わせようとしている。

「あの子を1人にしない為にもカレン、頼むよ」
「先生…もしかして死ぬ気ですか…?」

私の問い掛けには答えずただ微笑みを浮かべただけでルゴニス先生は任務があるからと小屋を出ていった。



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