倒れる仲間を見ながらこいつらは馬鹿だなあと私は笑った。 「素敵な部下に恵まれましたねミーノス様」 「その可愛らしさがなければ貴女を八つ裂きでしたよカレン」 「ご冗談を。嗚呼そうだ、彼の容姿の美しさに惑わされてはいけません。彼はこの薔薇園の薔薇同様、毒薔薇なのです」 私の言葉にほう、と興味をさらに引き立てたミーノス様はこれからどういたぶるのか考えているように見えた。 「次はどいつだ、その残った数人の部下をまた投入するか。それともお前自ら打って出るか、天貴星グリフォンのミーノス」 アルバフィカの言葉に口元を歪め楽しそうに笑うミーノス様。このままだと彼の独壇場になってしまう。…駄目、それだけは。この私がやらなきゃ。焦る気持ちを表に出さない様にしながらミーノス様を押し退け前に進み出た。 「まあまあミーノス様、ここはこのカレンにお任せを」 「…死ぬことは許しませんよ」 「ははっ、冥闘士の私は死ねませんから」 自嘲ぎみに笑い地面を蹴り薔薇園に入る。薔薇の上にそっと降り立ち久しぶりの薔薇の香りを吸い込む。 「ふふ、やっぱり園の中はいい香りね…気分も晴れるわ。私には魔宮薔薇の毒は効かないから」 だって、魔宮薔薇の中で過ごしてきたんだもの。貴女は素顔の私を知らない。だからこうして対峙しても気付かないのでしょうね。それでいいの。知らないほうが簡単に私を殺してもらえるから。 「…フッ、冥闘士のお前に薔薇の香気の良し悪しがわかるとは思えんが…」 「分かるわ、当たり前じゃない…」 「なに?」 怪訝そうに聞き返すアルバフィカには答えず静かに笑みを深めた。薔薇を一輪摘み取り、花弁を摘んで口に放り込んだ。はっと小さく驚く声が私にだけ聞こえた。ゆっくり咀嚼し飲み込む。 「ほーら、ね?私には効かないの…貴方と同じ」 「……お前は…。まあいい来い、遊んでやる」 強い意思の篭った瞳が私だけを貫いた。一瞬自分の決意が揺らめいだが、私は自分に嘘という仮面を付ける。"バレてはいけない"から。 0624 |