目が覚めたら私は小屋に居た。古いが小綺麗で、シンプルな造りになっている。私が起きた事を確認したルゴニス先生は教皇へ私を紹介してから仮面を差し出した。話を聞くと女聖闘士は仮面を付けることを義務付けられているらしい。女人禁制、というわけか…。私は仕方なく仮面を付けた。石段を下り花の、薔薇の香りのする宮に辿り着くと薔薇園を更に奥へ進んでいった。そこに先程の小屋があるのだ。小屋の周りは全て薔薇が覆い尽くしている。その中に水色が見えた。こっちに走ってくる…? 「ルゴニス先生!」 「ただいまアルバフィカ」 薔薇の中から表れたのは眉目麗しい少年だった。 先生の帰りを待ち遠しかったようで頬は笑みで緩んでいる。だがその先生の隣にいる見たことない姿に少し怯えたようでピタリと足を止めてしまった。大きな水晶のような水色の瞳を不安でいっぱいにしている。 「アルバフィカ、この子も今度から一緒に修行をするよ」 「私はカレン、よろしくアルバフィカ」 「よ、よろしく…」 下を向きながらぼそぼそ言うアルバフィカに苛々したカレンは走り寄りバッと両手を掴んだ。びくっと肩を揺らすアルバフィカ。 「私も耐毒体質なの、だから2人で頑張ろアルバフィカ」 「!…う、うん!」 少し固いが嬉しそうな笑みにカレンは仮面の下で笑みを浮かべた。 「ああそうだカレン、汚い言葉遣いは明日までに直そうね」 「ルゴニス先生さいってー!簡単に直せないし!」 「アルバフィカを見習いなさい」 クスクスと笑いながらルゴニス先生は一足先に小屋に入ってしまった。慌てて私たちも後を追った、手を繋ぎながら。 *** 私たちは最初の夜を同じベッドで過ごした。小さなベッドでも子供2人が寝るには十分であった。私は聖域の話を聞き、聖域の外の話を聞かせた。話は盛り上がり真夜中を過ぎると段々と眠くなってきた。カレンには眠りにつく前にどうしてもアルバフィカに尋ねたいことがあった。 「アルバフィカはこの血を憎んだこと、ある?」 「…どうして?」 「私ね、毒花って気付かないで村の皆を毒花畑に連れてっちゃったんだ…」 「!」 「驚いちゃった、私以外みーんな倒れるんだもん。私以外動いてるものはないの…」 笑いながら答えるカレンの姿は見ていてとても痛ましいものだった。自分だけが哀れなのだと思っていたアルバフィカは思わずカレンの小さな身体を抱きしめた。 「泣いていいよ。ここには僕しかいないから…」 「…ルゴニス先生みたいなこと、言わないでよ…っ!」 だいぶ涙腺が弱くなっているようだ。ルゴニス先生の前ででもしなかったのに、声を出して泣いた。同じ傷を持つ者同士だからか、すぐに打ち明けられたのだった。 0614 |