一週間ほど激務が続き、睡眠不足がピークに達した。
ようやく仕事が片付き、夕食の時間すら惜しくて自分の重い体を引きずりながら自室へ引き返す。
ループタイを外してからベッドに沈みこみ、そのまま意識を手放そうとしたが、控え目なノックの音がしたので無理やり目を覚ました。
「誰だ。」
「ナマエです。エルヴィン団長、お疲れの所申し訳ございません。入室しても宜しいでしょうか。」
「入りなさい。」
遠慮がちに入室した彼女は、手に持っていた籠をテーブルに置いた。
「どうした?ナマエ」
「夕食です。リヴァイ兵長が持って行くよう仰ったので。」
「そうか。わざわざすまなかったな、後で食べるよ。」
「いえ、ゆっくり休んで下さいね。」
「ああ、ちょっと待ってくれ。」
久し振りに会えた恋人があっさり帰ろうとするのだから思わずナマエを呼び止めた。
「ナマエ、おいで。」
自分の横を叩いて座るように促せば、少し戸惑いながらも隣へ座った。
「膝枕でもしてくれないか。」
「自分の体重幾つだと。」
「92キロだ。なに、ミケより軽い。」
「私の膝を破壊する気ですか。」
さりげなく膝を撫でてみるが、手を掴まれて断固拒否される。少し傷ついた。
「我が儘言ってないで。ゆっくり寝て休んで下さいね?」
再び立ち上がって部屋を出ようとするナマエをもう一度呼び止めた。
「ナマエがいないと落ち着かないんだ。」
遂には呆れ顔をしたナマエだったが、溜め息を吐きながら戻ってきた。
「団長が寝たら部屋に戻りますからね。」
ベッドに近付いたナマエの腕を掴み、有無を言わさず力ずくで布団に引きずり込むとそのまま抱き締めた。
ナマエは一瞬体を強ばらせてこちらを伺ってくる。普段ならば男として非常に美味しい状況だ。が、残念ながら睡魔に負けた今は彼女の頭を撫でるだけで満足だった。
「これじゃ団長が寝ても身動きがとれません」
「出られたら帰ってもいい。」
逃がさないように脚を絡ませると、一発だけ強めに胸元を叩かれる。
もう少し戯れていたいが、いよいよ本格的に眠気が襲ってきた。
彼女の頬に手を添え、こちらを向かせ唇を重ねた。
「愛してる、ナマエ。おやすみ。」
もう一度彼女をしっかりと抱き締めた。
ナマエが遠慮がちに手を背中に回す感触を味わいながら、ついに瞼は重力に負ける。
「おやすみなさい、エルヴィン団長。」
私も愛してます。
微睡みの中で愛しい声が聞こえた。