小説 | ナノ



日頃、兵団本部に寝泊まりする事が多いため滅多に帰る事のない家。
エルヴィンは薄暗い室内を抜け、寝室のドアを開けるとダブルベッドの真ん中でまるく膨らんだ布団が目に入った。ゆっくり音を立てない様に近づいて覗けば小さく寝息を立てる愛しの幼妻。

結婚して1年。
立場上、結婚式をあげる暇はなく書類上の手続きだけ。味気ない結婚で悪いと詫びるとナマエはそんな事ありませんと笑っていた。ならばせめて一緒に寝るぐらいはと思い購入したこのベッドだったが実際ともに寝たのは片手で足りる程の回数ぐらいだ。


ナマエの寝顔を眺めていると人の気配を感じてかナマエが目を開けた。あらぬ方向へ何度か視線を投げた後、パチリと目があった。

「ただいま」
「お、かえりなさい」
虚ろなその瞳からまだ夢うつつを行き来しているのが容易に予想でき、思わず漏れる苦笑。伸ばした手で顔にかかった横髪を梳きながら撫でてやるとナマエは気持ちが良いといって目を細め撫でる手に擦り寄ってきた。


途端チリ、と感じる劣情。
自分も歳をとったと感じるもののまだ衰えていないのだと言う変な安堵感。未だ夢うつつ状態のナマエを見ながらどうしてやろうか思考を巡らし、ナマエの口に自身の親指を侵入させる。突然の事に驚いたことで目が覚めたのか蕩けていた目が一瞬見開かれた。

起きたのならばこちらとしても都合がいい。

何事かと言いたげに不安そうな目で見上げてくるナマエ。エルヴィンはふわりと笑いながらベッドに腰かけ優しくナマエに命令を下す。

「舐めて」
「っ…」


言われるがままナマエの舌がエルヴィンの指を軽くなめた。

「もっと舌を絡められるか?」
「っん、ふ…ぅ」

言われるがまま口内の指におずおずと舌を絡めさせる。其れを褒めるように空いている方の手で再び撫でてやればナマエはもっというように舌を絡ませてきた。


苦しさからか涙を瞳に溜め、口からは涎を垂らしそれで指を舐めることを辞めず時おり漏れる艶めかしい喘声と水音。
その光景を見ながらエルヴィンはよく此処までとほくそ笑む。


初めて出会ったのはある酒屋だった。
その店で働く看板娘のナマエに恥ずかしながら一目ぼれ。出来るだけ時間を見つけてはちょくちょく酒場に通う日々が続いた。ようやく彼女に想いを告げて“店員と客”という関係からから“恋人”となったものの、手を伸ばせば顔を真っ赤にさせ逃げる始末。


恥ずかしい、ダメですが口癖のようだった。
しかし、付き合ったとなれば手を繋いだりキスしたり、当然それより恥ずかしい事もするのだから慣れてもらわねばならない。少しずつ慣らして愛でて、甘やかし。

この光景も付き合ったばかりの頃を思えば驚くべき進歩とも言えよう。



何も知らなかった彼女。
真っ白なキャンパスに下書きし、色を塗るのは今もこれからも自分一人。


沸き起こる感情を他所にナマエは小さくエルヴィンの名を呼んだ。

その顔も仕草も、すべて彼を煽るもの。
一回り以上も歳下のナマエ。加減をしようと思っても出来ないのは男の性だと自分に言い訳をしながらナマエの服へと手をかけた。


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