最初に「すき」だと打ち明けたのは#ナマエ#とエルヴィンどちらだったか。
それすらもう覚えていない。
日曜の昼下がり。
久々の休みにふたりでソファーに座り談笑をする。時折、ナマエが抱きついてくるので笑いながら頭を撫でてあやせば「子ども扱いしないで下さい」とナマエが頬を膨らませる
そういうところが子どもっぽいのだ。
しかも17歳は30前半のエルヴィンからすれば十分子ども。しかし、それが頭の中で分かっていながらもナマエを愛おしく思ってしまう自分はロリコンなのかと思ったが考えるのは止めた。
「まさかナマエが俺を好きになるとは思わなかった。」
「私はなんとなく思ってましたよ?」
「へぇ、」
親に先立たれ、この広い世界に一人ぼっちになった幼いあの日。
面倒を見るのは嫌だと次々に親類たちは厄介者のナマエをあちらこちらへ盥回しにした。
そんなナマエに「居場所」を与えてくれたこの人が好きだと幼いながらに想ったのだ。
「そういえばナマエは源氏物語を読んだことがあるかい?」
「紫式部の奴ですよね?確か高校の古文でちょこっと出てきた様な気はするんですけど内容までは…」
「いくら古文が苦手だからと言って、ノートの端に猫の落書きをしているから内容を覚えていられないんだ」
「それって昨日の授業の…!?なんで知って…!?」
「見られて困るものならリビングにノートを開きっぱなしで風呂に行かない事をお勧めするよ」
慌てふためくナマエと対象にエルヴィンは楽しそうに笑いながらかけていた眼鏡を外した。
「源氏物語」。
その中にある「若紫の段」は光源氏と若紫(後の紫の上)の話だ。8歳年下の少女を自分の理想の女性へと育て、手を出した。
高校時代にはじめて源氏物語を読んだ際、そのことに嫌悪を抱いた。
自分で育てた少女をよくもまぁ…と。
当時の自分では考えもしなかっただろう。
その数年後、この話の主人公の様に、自身が育てた少女と恋仲になるなんて。
あの頃の自分が今のこの現状を見たらどういうか、分かりきっている。
思わずもれた苦笑にナマエが首を傾げる。
「どうしたんですか?」
「いや、ただの思い出し笑いだよ」
この先、綺麗になっていくであろう少女。
もし、ナマエに自分以上に好いた男が出来たら潔く身を引くなんてことができないだろう。
「ナマエ、好きだよ」
だから出来るだけ自分に依存して、依存させて。
「私も。大好きです!」
だが、そんな事をいえば彼女はきっと怒るのだろう。
「私はあなた一筋なんですよ!!」と。
反面教師に恋の味
反面教師に恋の味
(こんなズルイ大人を許してほしい。)