小説 | ナノ



そもそもの話、何故エルヴィンとこんな関係になったのかが思い出せない。私はエルヴィンの随分後に調査兵団に入団して来たし、その時既に団長という位に付いていた彼と一般兵である私に接点があるとは思えない。

気付いた時には、とうにこの関係が出来あがっていたのだ。今ではエルヴィンの骨ばった指が私の頬に触れるのも、熱い舌が首元に埋まるのも、互いの足が絡まり合うのもごく自然で当たり前のことになっている。

人より豪華なベッドに飛び込む。私の部屋の物とは比べる対象にならない位にふわふわで、ゆっくりと私の体が沈んでいく。気が狂いそうな程に動きまわった昨日の壁外調査の疲れが今さら出て来たのだろうか。エルヴィンの香りが染み込む枕に顔を埋めていたら、段々と眠気が襲ってきた。どう足掻いても重い瞼には勝つ事なんて不可能だ。


「おはよう、ナマエ」
「…エル、ヴィン、何でここに」
「さぁ。何でだと思う」


ゆっくりと開いた瞳に映ったのは、私の隣で壁に背を預け、本を読んでいるエルヴィンの姿。寝起きで動かない頭を必死に回転させて部屋を見渡す。赤く照らされたこの部屋は見慣れているけれど、自分のものではない。

そう言えば、そのままエルヴィンのベッドで眠ってしまったんだった。全てが理解できた時、また瞼が重くなっていく。枕に頭を落とす。ぼんやりとした視界で、ごろんとエルヴィンの方へと体を向ければ目の前には彼の太もも。

もそもそと体を動かして、筋肉質なそれに頭を乗せる。決して柔らかくないし、気持ちの良いものでは無い。けれど、触れ合った部分からエルヴィンの温もりを感じてとても心地良い。


「まだ眠いのか?」
「、ん」


大きな掌が優しく私の頭を撫でる。自分の顔を甘えるように太ももに擦りつけると、頭にあった手はゆっくりと頬へと移動し、太い親指が私の唇に触れた。まるで感触を楽しんでいるかのように唇に触れているから、少し悪戯をしてやろうと思いぱくりと噛む。


「おや。ナマエはいつの間に噛み癖が出来たんだい?」


そう言うと同時に、親指がぐっと口の中に入り込んだ。エルヴィンの親指が舌に絡む。離そうと思い手を引っ張るけれど、所詮は男と女。力が叶うわけ無く、私の口端からはだらしなく唾液が零れた。

ようやく離されたと思った時には息が切れ切れで、肩を揺らして呼吸をしなければならなかった。すっかり目も覚めてしまい、上半身を上げてエルヴィンを見れば、私の唾液だらけの親指を、ちゅ、と音を立てながら舐めていた。


「エルヴィ、んっ」


私の言葉はエルヴィンの口の中に消えていった。顎に添えられたエルヴィンの指は、まるで私を逃がさないというかのように熱い。口の中を動き回る舌は絡まり合い、小さく粘着質な音を奏でる。

互いの唇が離れる。目の前のエルヴィンは普段人前に出る時とは全く違う、熱を帯びた表情をしていた。ぐっと背を伸ばし、エルヴィンの首に手を回し無理矢理自分の方へと近づける。口から零れる唾液をぺろりと舐めれば、軽くキスが落とされた。


「やっぱりナマエは手元に置いておくべきだな」
「なぁに?隊長にでも昇格させてくれるの?」
「ナマエの実力なら誰も文句は言わないはずだ」
「団長様が職権乱用なんて最低」
「そんなことをさせる程に夢中にさせたナマエも十分に最低だ」


柔らかい風を感じたと共に、背中にはさっきまで寝ていたベッド。目の前には、まるで肉食獣のような顔をしたエルヴィン。筋肉質で大きな背中を囲うように、両足を絡ませればちくりと首元に軽い痛みを感じた。


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