「なぁ名前、俺は悪ないねんて!」


『知らん、謙也なんかその子とイチャコラしといたらええやんかっ!』


部活が騒がしいのは四天宝寺テニス部にとっては珍しくないことだが、本日は騒がしいと言うよりもある2人のせいでぎくしゃくしていると言った方が正しいのかもしれない。


「なぁ…小春、なんであの2人あんなぎくしゃくしとんのか?」


「それは俺も聞きたいわ!」


「あら、ユウくんにくらりん!そやねぇ…、原因はほんとしょうもないことなんよ…」


小春が話すには、あの自称「浪速のスピードスター」忍足謙也は俺たちからすればヘタレなんやけど、女子受けはそこそこ良いらしくなんでも、『見た目はちょい悪なのに、性格とのギャップがたまらない』という子が多いらしい。

白石と同じクラスになってからあまり目立たなくなっていたが、告白も結構されていて

その現場を名前ちゃんが目撃→謙也が気付いて慌てる→告白してきた子が名前に気付いて謙也に抱きついた

と言うことになり、勿論名前はそれから謙也とは口を聞かなくなったそうだ。


「ま、謙也のことやかやら名前ちゃんに一途なのは明らかなんやし、どうにかなんのちゃう?」

「こういうのはほっとくのが一番やな」


「私達は暖かく2人を見守ってあげまひょ!」


と言うことで、改めて練習を開始する3人だった。











その日の帰り道、私は昨日のことが原因でまだ謙也と話していなかった。

そりゃ、はよ仲直りしてイチャイチャしたいし、謙也からあの子に抱きついたんちゃうからもういいかなって思ってるんやけどなかなか言い出せずにいた。


「名前…、」


謙也が私の名前を呼んだので振り向こうとすると、いきなり唇に暖かいモノが触れた。

それは角度を変えながら徐々に深いものになっていき、私は息が出来なくなって謙也の胸を叩いた。


『…はぁ、けん、や…』


「俺が好きなんは名前だけやねん…、この気持ちにだけは嘘はあらへん!」


『謙也…』


「せやから…あの、えっと…」

『…わかってるよ、私も謙也が大好きでたまらへんから!』


「…名前!」


それから、謙也は口を聞いていなかった間を埋めるためか知らんけど、長い長いキスをした。

周りに人がいる中でされるのはものすごく恥ずかしいけど、ヘタレと言われる謙也がこんな事が出来るなんて、男の子は狼なんだよとよくお母さんに言われていた意味がやっと分かった気がした。



キス一つで一件落着




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