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▼ びーらぶのみち

ノグ国の王都へとたどり着くと沢山の人であふれかえっていた。
自分たちの国も活気に満ち溢れていたものだがノグ国も中々のものだ。
軍事の国と聞いていたのできっちりと整列した兵隊が行進していたり、
警戒の体制も厳しいのだとばかり思っていたがその想像は180度違っていた。
小さな子供たちは道の端で楽しそうにわらべ歌を歌いながら遊んでいるし、
大人たちは、生活の知恵を互いに話し合っているようで楽しそうだ。
ぼおっとその光景を馬車の中から覗いて観察しているとカズマがリンに声をかける。

「あれが、王城の植物園と有名な魔術学校だ」

「魔法が使えるんですか?!」

「らしいな。俺は見たことがないが」

驚いて振り返るとカズマの表情が少しだけ楽しそうに見えた。
その魔術を軍事へ応用しているらしいノグ国のそのシステムは他国にとっては実に興味深いのだ。
カズマ達の国には魔法はないが、防衛に対して、なにか収穫があるかもしれないと思うと期待をせずにはいられない。
馬車はやがて王城の大きな石造りの門を通りぬけると町の広場ほどもある場所で止まった。
続いてカズマの従者達が乗っていた馬も足踏みをしながら止まる。
すると城から数人の従者が現れて訪れた客人を迎えようと御者や従者に話しかけていたがやがて馬車の扉を静かに開いた。

「ようこそおいでくださいました。長旅でお疲れでございましょう、さあ、ご案内いたしますのでこちらへどうぞ」

初老の男が丁寧にあいさつをするとまずはレディーファーストと言わんばかりにリンへ手を伸ばした。
リンは、しわの刻まれた手へ自分の手を添えるとゆっくりと馬車の階段を下りた。
そのあとに続いてカズマが降り立つと現れた従者達が道を作って縦に並びだした。
その先にはこの国の主であるフォレガータ・ノグ・ホウヴィネンが片手を腰に当てて立っていた。

「カズマ王子、よくぞ我が国へ参られた。道中大変だったろう」

「いえ、私たちの国にはない動植物がおりましたので妃と退屈せずに来ることが出来ました」

「それはよかった。…そちらが?」

「あ、リンと申します」

「初めまして。ノグ国女王、フォレガータ・ノグ・ホウヴィネンだ。まずは中へ。旅の疲れを癒されるがいい」

すらりとした足を伸ばして踵を返すと腰に下げていた豪華な装飾の剣がカチャカチャと音を立てる。
背筋をぴんと伸ばして前を歩く女王は、長い髪を揺らしてまっすぐ前を向いて歩きだした。
リンは、今まであまり見たことがないタイプの女性を目の当りにしてその細身の後ろ姿からやや暫く目を離すことができなかった。
例えるなら隣で並んで歩いているカズマを見ているようだったのだ。

「なんていうか……凛々しい方ですね」


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