▼ なでなでされたい
パパについていって遊びにきた海外で、なんとなく、小さな食堂に入った。
そこはこじんまりとした食堂だったけど、結構繁盛しているようで、やっとのことで二人がけの席に腰を下ろした。
「いらっしゃいませ!ご注文は?」
すぐに声をかけられて、思わず日本語で返事をしそうになったけど、私は慌てて拙い英語で言った。
「おすすめはありますか?」
「えっと……今日は美味しいトマトが入ったので、ミートソースパスタがおすすめです!」
「じゃあ、それで」
「かしこまりました!」
そのウェイトレスの女の子は、屈託のない笑みを浮かべて、キッチンへと駆けていった。
……可愛い女の子だな。
私より少し下くらいかな。
綺麗な赤毛はふわふわとしていて、さわると柔らかそう。
純粋そうで、明るそうで、見ただけでいい子なのがわかるくらいだ。
来ているお客さんもにこにこと彼女を見つめている。
ていうか……私より、胸おっきいし。外国人の発育ってどうなってるのよ。
そんなことを考えていると、また入り口が開いて、一人の男の人が店に入ってきた。
当たり前だけど、外国人だった。
外国人ってやっぱりかっこいい人多いわよね。
30代くらいかな。でも、それより少し若くも見える。
ぼんやりと彼を眺めていると、どこかで見たことがあるような気がした。
何だろう、雰囲気かな。
──あ、そっか。
そこまで考えて、気がついた。
彼、放つ雰囲気がヒトシさんと似てるんだ……。
「あっ!アルバートさん!」
すると、さっきキッチンへと消えた女の子が走ってその人のもとへと駆けていく。
「よっ、ミリアム!愛しい恋人のお出ましかい?」
「やけるねぇ!ひゅー!」
「み、皆さん、やめてください!」
他のお客さんが飛ばしたヤジに、私は耳を疑った。
──恋人!?
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