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なに言ってるんだよ、と幹也が叫ぼうとしたときだった。
リンを抱きしめて離さないまま、カズマは低い声で言った。
「……わかった。お前らは……俺の敵だな。どんな理由があろうと、リンに手を出そうとする奴も そういう無粋な輩を野放しにする奴も容赦せん。……お前とは友人になれるかもしれないと思ったんだがな、真人。そんな弱い犬のような奴は俺の友とは呼べん。……俺なら、例えリンが別の男を好きでも、奪って自分のものにしてみせる。そういう奴だけが、ほんとうに叶えたい望みを叶えられるんだ。……覚えておけ」
カズマはそれだけ言うと、まだ呆然としているリンの手を引いてどこかへ去った。
白い部屋に真人と幹也だけが残される。
「……あのさ、幹也……」
真人が言いかけると、幹也はハァ とため息をつきながらしゃがみこんだ。
頭をガリガリと掻きながら、真人を見上げる。
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