▼
side:可愛い嫁
「あ、幹也さん!これ良かったら食べてください。今日、マリカさんに手伝ってもらって焼いたクッキーなんですけど……」
真人とカズマがおかしな友情を築いた世界と微妙に繋がった世界。
リンと幹也は楽しいティータイムを行っていた。
満田のような案内役のいない世界だったが、そこはリンの朗らかな性質が二人の間の空気を和らげた。
「ほんと?あー美味しい。これ、ナッツ入り?」
幹也はリンの差し出したクッキーをつまんだ。
リンはにっこりと笑って頷く。
「そうなんです。城のお庭で拾ったクルミを砕いてねり込んでみました」
「んー最っ高。リンちゃんみたいないい嫁がいる人は幸せだねー」
満面の笑みでクッキーをほお張る幹也にリンは少しだけ悲しげな表情を浮かべた。
「そう……でしょうか。私、ちゃんとカズマ様のお役に立てているんでしょうか……」
リンの雲った表情に幹也は目を丸くする。
けれど、すぐにフッと笑った。
prev / next
(23/30)