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雲に遮られて弱くなった光を頼りにその光がなんなのかを真人は見定める。
……それは、涙だった。
幹也様の目の端には涙が溜まっている。
「……どうして……?」
「……っなんでもない、なんでもないから、そんな風に見るな……っ」
"見るな"の言葉が真人の中でリフレインしながら静かに沈んだ。
けれど、その言葉を聞き入れることは出来なかった。
細い肩を掴んで、抱きとめる。
胸の中にあたたかな体温が滲んだ。
「……っなにするんだよ、はなせ……っ」
「嫌だ。……離したくない」
何故、幹也様が泣いているのか 何故こんなところにいるのか それはわからなかった。
でも、今 このぽっかりと心に穴が空いたような弱った幹也様なら、ただの文官に過ぎない自分にも付け入る隙間があるんじゃないかって……そう、頭の隅で思ってしまった。
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