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まるで太陽のように微笑んで、幹也様はそうおっしゃった。
薄紅色の十二単を翻して歩く凛とした背中に礼を言う暇もなかった。
しかし、その瞬間から 幹也様は真人にとって特別な存在になった。
それからというもの、真人は本来の仕事が終わった夜の時間を使って、幹也様のことを書き記すようになったのだ。
「……ふぅ」
随分長いこと集中していた。
月明かりが雲に陰って、手元が暗くなる。
そろそろ眠りにつこうか、と思ったときだった。
ひた、ひたと静かな足音が近づいてくる。
こんな夜遅くに、一体誰だ……?
真人は首を捻りながら部屋の外に顔を出し、足音の主の顔を見た。
……思わず、息を呑む。
それはここにいることはありえない人の姿だった。
「……幹也様……!」
「お前……?」
誰だ、と続きそうだった言葉は途中で途切れる。
同時に何かがきらりと光った。
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