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「反対なのはこっちだ馬鹿!こんな意味わからんことに付き合えるか!せめてなんでこんなことになってるのか説明しろ、説明!」
さらに激しく揺さぶってやっていると、ふいに低い声が言った。
「それは俺も同感だな。一体何なんだ、ここは」
その声を聞いた瞬間 ピタリと時間が止まったようだった。
少し低い、でもよく通る 声。
耳を傾けずにはいられない、それは支配者の声だった。
「……あなたは……?」
とても整った顔をした人だった。
天を向く優美な鼻梁、黒い髪。切れ長の黒い瞳。
テレビに映るアイドルなんて目じゃない、本当の美形だった。
「……お前、俺を知らないのか?……ということはここは俺の国じゃないみたいだな」
「俺の、"国"?」
真人は目を丸くした。
日常に出てくる言葉とは思えない。俺の"国"なんて。
それとも、まさかこの人は、ほんとうにどこかの国の王だ、とでも言うのだろうか?
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