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▼ So dear to your everything

長い長いキスだった。


息を吸う隙もないほど何度も、傾きを変えながら重なった唇に私の呼吸は速くなる。


しがみつくようにまわした手も震えて 彼の背中に触れているのが、まるで夢みたいだった。


私がどこかカラダが浮いているような、現実感のないまま 彼にされるがままになっていると、ずっと重なっていた唇が ふいに離れた。


少し驚いて閉じていた目をそっと開けると、バサ と彼は着ていた服を脱ぎ捨て、ベッドの下に服を落とした。


窓の外から差し込む薄ぼんやりとした明かりに照らされた彼のカラダはしなやかに筋肉がついていて……男の人にこんな風に思うのは おかしいのかもしれないけれど……とても、綺麗だった。


けれど、そんな彼のカラダを真っ直ぐに見られない私は思わず背中に回していた手を離す。


熱くなる頬を隠すように横を向いた私に彼は微かな笑みを零した。


「……恥ずかしいのか?」


「……っ!」


……そんな、そんなわかりきったことをわざわざ聞かないで欲しい。


自分の気持ちを言い当てられて 私の心臓はますます速くなる。


答えられず、ただ涙目で震える私を見下ろして 彼は再び笑みを零した。


「……俺だって緊張してる」


「……っう、嘘……!」


彼はうそつきだ。


彼はこういうとき、いつだって自信たっぷりで……余裕があって。


彼のすること全てに赤くなったり青くなったりする私をどこか愉しげに見つめていて。


だから、彼が緊張してる、なんてことは……あるわけがない。


首を振る私に、彼はたった一言、「嘘じゃない」と言った。


その言葉とほぼ同時に彼の手が私の手を取り、そっと彼の左胸に私の手のひらを触れさせる。


「……触ってみろ、速いから」


……汗ばんだ肌の感触越しに、彼の鼓動が伝わる。


それはドクン、ドクンと大きく打っていて 彼の言葉が嘘じゃないことがわかる。


「……嘘じゃないだろ?」


耳元で甘く囁くと 彼は私のカラダをうつぶせにすると服の隙間から手を入れた。


背中をなぞる手の感触に私が背中を跳ねさせたときにはもう、私の服は彼の手によって剥ぎ取られてしまっていて 私のカラダを隠すものはなにもなくなってしまっていた。


「やっ……」


恥ずかしくて、恥ずかしくて身を縮める。


背中を向かされていて、良かった。


今 この顔を彼には見せられない。


……私、きっと……ひどい顔を してる。


すると、彼の手が私の胸にそっと触れた。


「お前のも、速い」


そう言った彼の声は なんだかとても優しくて……嬉しそうだった。


そんな彼の声に私の胸はきゅう、としめつけられる。


彼は、ときどき とてもずるいことを言う。


彼のそういう何気ない一言が、どんなに私の心を掴んで 離さなくするのか 彼はきっと……知っている。


私が彼の一言に胸を震わせていると、背中に彼の唇がそっと触れた。


うやうやしく、どこか遠慮がちなのが彼らしくない。


「……カズマ様……?」


おそるおそる彼の方を向くと、彼は笑っていた。


「……やっとこっち、向いたな」


そう言われてようやく気づく。


だ、騙された……!


「ひ、ひどいですカズマ様 騙す、なんて……っ」


「騙した?なんのことだ?」


わ、わかってるくせに……!自分がらしくないことをすれば、私が彼の方を向くって、わかってて あんな風にした、くせに。


彼は笑顔だけど、がっちりと私の手首を押さえつけて離さない。


彼の目の中には酷い顔をした私が映っていて、私は思わず震える。


けれど、彼はそんな私の様子は意にも介さず、首筋にキスをした。


優しいキスじゃなくて……噛みつくような、強い キス。


「……んっ……や…、カズマ様 だめ……っ、待って ください……」


彼の唇と自分の素肌が重なって 強い熱を帯びる。


頭の中が沸騰したようで……何も考えられない。


私の必死の懇願を、彼は当然 聴こえないふりをした。


私の肩に触れ、腰に触れ……胸に 触れる。


「……あっ、……や、……」


漏れた私の声に彼は満足げに微笑むと、耳元をキスでなぞりながら囁く。


「……可愛い、リン。もっと聞かせろ」


「ん……っ」


いや、の言葉は もう うまく出てこなかった。


彼の指が私の一番敏感な……彼以外、誰も触れたことのない場所に触れる。


「少し、足 開け」


彼は静かにそう言うと 私の閉じた膝を開いて内腿の裏側を掴んだ。


「……っ」


私が声もなく震えていると、「……もう いや、とは言わないんだな」と微笑む。


「……恥ずかしい と泣きそうなお前も好きだが……少しずつ、慣れさせないとな。こうして、俺に抱かれることに」


早く、リンの全部を俺のものにしたい と囁かれ、ゆっくりと彼が私の中に入ってくる。


甘い痛みと、彼の熱


すべてがやさしく溶けて、夜の中に満ちていく。


私は必死に彼の背中にしがみつきながら、いつか彼とこうすることを「普通」にできる日がくるんだろうかと……そんな想像もできない未来に 想いを、巡らせていた。





■END■



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