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「ふうん。年上、だよな?」
「どこからどう見てもそうでしょ! 敬語使ってよ……」
「俺らと同じくらいに見えるけry「失礼!」ってぇ! …藍なにすんだよ、クソッ。……俺は朝義一流、一流で良いからな」
「はい。わたしもリンで良いからね、よろしく一流くん」


いきなりのタメ口には驚いたが、それが彼の素なんだろう。敬語使って!と怒鳴る藍ちゃんに耳を痛そうにする一流くん。二人は本当に仲良さそうで、少し羨ましかった。


彼と、こんな風になれたら良いな、なんて。


しばらく二人と話していると、一流くんがふっと思い出したように、「そういや」と言い出した。


「――そういや、雪白だったら、目付きの悪いやつと仲良く喋ってたぞ」
「……え?」
「珍しいかったんだよ。いつも含み笑いの雪白があんなに楽しそうに笑うのがよ。男の方も、なんだかまんざらでも無さそうだった気がする」



――それは、どういう意味だろう。



彼を引っ張って行ったあやめさんの顔が浮かぶ。本当に嬉しそうに彼を引っ張って行った。あの彼が「しょうがない奴だ」という風で――二人は、いつから知り合いなのだろう? きっと二人はわたしよりも付き合いは長い。そして、あやめさんは彼のことをわたしよりも知ってる。


ドロドロとした感情がせり上がる。なんだか、悔しくって黒く燃え上がるような気持ち。


……彼はわたしの夫、なのに。


――自覚した独占欲に、ハッとする。


でも、ハッとしたのは自分の気持ちだけじゃなくて……藍ちゃんと一流くんが喧嘩し始めたからだった。


「どうして一流くんは人の気持ちが考えられないの!!」
「はあ!?」
「いつもそう!デリカシーがないんだもん!」
「なんだよ、意味がわかんねえ!」


あ、あの! と口を挟むが置いてきぼりを食らう。二人にわたしの声は届いていないようだった。


「発言する前に、その内容を言ったら、言われた人はどう思うか考えなよ」
「なんでそんなの考えなきゃいけねえんだよ!めんどくせえ!!」
「そんなのだから――……もういいよ」
「なんだよ!」
「もう良いってば」
「お前のそういうとこムカつくんだよ!言おうとしてやめるとこ、一人で鬱になるとこマジうぜえ」
「……っ!」


うわあ、とひどい言葉を言った一流くんに引く。それはあまりにひどい。藍ちゃんはスクッと立ち上がり、一流くんを睨んだ。


「……一流くんのバカ!へたれ!あんぽんたん!」
「誰がへたれだ鬱子!!!」
「うるさい……っ!」
「ぶほ?!」


うわああ!? わたしはびっくりして動けなかった。藍ちゃんが一流くんの頬を引っ張叩き、部屋を出ていってしまった。



こ、これが修羅場!?



「な、なんて考えてる場合じゃない!!! 一流くん、良いの!?」
「……ほっとけ。ってぇ……思いっきりやりやがって」
「手を出した藍ちゃんも悪いけど、あんなことを言う一流くんもひどいよ!」
「うるせえよ……! お互い頭に血ぃ登ってんだから! 追いかけてもしょうがねえだろ!?」
「……わたしなら、追いかけてほしい」


自分の立場で物を言うのもなんだけど、こういうときは追いかけるものだよ。良く読む少女漫画の知識だけど!



「一流くんが追いかけないならわたしが追いかけるからね!?」
「……勝手にすれば良いじゃねえか」



ムッとするが、勝手にさせてもらう。だって、このままなんて居心地が悪い。椅子から立ち上がって、藍ちゃんを追いかけた。
























――まさか一流くんが、



「……上手く行ったな」




なんて言いながらニヤッと笑っているとは思わずに。



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