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▼ 唇に人差し指

「この近くに知り合いの娘の家がある。挨拶ついだ。少し寄って行っても良いか?」
「はい、良いですよ」


それは得意先に「結婚」の挨拶を済ませたあとだった。つい三ヵ月前「夫」となったカズマさんの言葉に頷く。運転するカズマさんはそれから黙り、わたしは「知り合いの娘って誰だろう?」と考えながら、淡々とした景色に目をうつした。


――わたしの名前は、リン。中小会社の社長の娘「だった」。過去形なのは、わたしがこの隣に座る、一流企業の青年社長・カズマさんに嫁いだから。(出会いについては文字数の関係で割愛します)


あちらから、中小会社のわたしの父に申し出があって……政略結婚で結婚したのだけれど、いまだにどうしてカズマさんがわたしと結婚しようと思ったのか分からない。


彼なら、引く手数多だろうに……と思って首を降った。それを疑うのは、私を好きと言ってくれる彼に失礼だと思ったから……。でも、何の魅力もない私と彼が釣り合ってないんじゃないかと不安に襲われる。


ああ……とネガティブな思考になっていると、車はいつの間にか立派なお屋敷の横に停車していて、カズマさんが「ついたぞ」と言う。


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