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まさか、と酒に目をやる。あの酒には変な薬がはいっていたというのか。一国の王子殿下と王妃になんてもん飲ませたんだ! 愉快犯の女王が何かを差し入れた時点で疑うべきだった。なんで、結婚で浮かれていたんだ、俺。
「かずまさま……がまん、しなくていいですよ……?」
「俺はカズマじゃない!」
酔いと寝ぼけで俺をカズマと勘違いしているらしい。ぽーっとした目で誘ってくる奥方は可愛いが、些か物足りないのは彼女のせいである。なんというか……ぐっと色気が足りない。そりゃ、毎日のように色欲魔を相手にしていたら、どんなに可愛い女や美女、それこそ我が国の女王に迫られたとしても、グラつかなくなる。
「わたし、きょうきたいっていったのは……かやさんに、どうやったらそんなに素直になれるか、聞くためだったんです……それこそ、さそいかた、とか……っ」
「アイツはただの欲望の塊だから王妃は真似をしなくても良い!」
そんな目的があったのか。でもアレは元からああだから、としか言い様がない。奥方がアレの真似をし出したら、カズマは度胆を抜かれるんじゃないのか?
なんとか身体を離そうとするが、酒(と薬)のせいか上手く力が入らない。
――とその時。
「なにを……している……?」
絶対零度の声が響いた。
Oh……修羅場じゃないかこれ。カズマは俺を氷のような目で見ている。その左手は腰の刀に添えられて今にも抜かれそうだ。
「かずまさまが・・・ふたり?」
「あっちがほんも……」
「ん……うー、あたまぐらぐらする……あ……先輩?」
修羅場……激化したぞ、おい!
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