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「……人の肌はいいな。あったけぇし、やわらけぇし」
「おい」
「まぁ聞けや。なぁ小僧、人の肌は何を人に伝えると思う」


おかしなことを聞く。
俺は眉をしかめながらくまに言い返す。


「体温じゃないのか」
「へんっ、だからてめぇは青いってんだ」
「黙れ斬るぞ」
「かー、キレる若者ってぇのはてめぇみてぇのを言うんだな。人の話は最後まで聞くもんだ」
「貴様はくまだが」
「話の腰を折るなってぇの。俺ァてめぇより長く生きてるから教えてやらぁ」


くまはひどく偉そうに、俺に言った。


「人の肌は──そのぬくもりは、愛情を伝えんだ」
「愛情、だと?」
「あぁ、そうさ。触れ合うことで、人は愛情を確かめ合う」


くまが何を偉そうに、と背を向けた。
その刹那、くまは一際小さく──悲しげな声で、呟いた。


「それすらなくなったら、俺ァ何で、その愛情を計るのかねぇ……」


消え入りそうな声だった。


俺が。
俺が妻に──リンに触れられなくなったら。
リンが、俺に触れなくなったら。

俺は、何で愛情を伝えるのだろう。


弾けるように振り返った。
そこにくまの姿はなく、いつもと変わらないベッドが、目の前に広がっていた。


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