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「貴様は何者なんだ」
「ご挨拶だなぁ、おい」


持ち上げると、手足がぷらぷらとした。
喋る以外は、普通のぬいぐるみなんだが。


「持ち主は何処だ、言え」
「持ち主ねぇ……さて、どうしたかな」


ぬいぐるみの声音に、少し違和感を覚えた。
しかし、その違和感の正体が分からず、俺は話を進める。


「今日一日あいつに抱かれてへらへらしやがって」
「羨ましかったのか?へー、そりゃどうも」


いちいち腹の立つ言い回しをするくまだ。
俺は手に力が入りそうになるのを必死で押さえる。


「まぁいいじゃねぇか。俺だって、久しぶりに人間にああして貰えたんだ。それぐらい、許してくれや」


──久しぶり?
ひっかかる言い方に、何も言えなかった。
その声音が、寂しげだったからかもしれない。


俺は手を離し、乱暴にベッドに座らせた。
くまは不満げに声を漏らしたが、聞かないことにする。

しばらくして、くまが小さく呟いた。


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