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▼ 温泉でカズマを誘惑するリン(講師:沙弥ちゃん)

「は? 色気……?」
「は、はい……!! 私、色気が欲しいんです!」


 身を乗り出して真剣な面持ちで私に訊ねるリンさん。リンさんに色気は真逆なモノの感じがする。確か……色気って愛嬌って意味もあったけど、リンさんが言ってるのは間違いなくそっち方面だしなぁ。


「……リンさんには、まだ早いと思うよ?」
「うっ……カズマ様にも言われました」


 しゅんとするリンさん。でもやっぱり、色気ある女のコになりたいんだろうなぁ。いや、なれないこともないと思うけど、リンさんも、殿下さんも、早いよなぁ。
 でも、こんな一生懸命な女のコに無理って断言することもなぁ。


「……色気、今すぐつけることは出来るよ? 一応」
「ほ、本当ですか!?」
「でも、私はゆっくりの方がいい気が……はぁ。
 分かった。分かったからそんな顔で見ないで」


 リンさんは本当に何事にも一生懸命だ。一途というか、それしか見えない時がある。後先考えないというかなんと言うか。
 色気をつけてどうなるかなんて、目に見えてるのに。


「……じゃあ、今から私がリンさんにすることを真似して殿下さんにしてね」
「え……?」


 そう言って、私はリンさんに手を伸ばした。


▽△


 何だ、この状況は。

 目の前には爆発するのではないかというくらい真っ赤なリンの姿。そしてここは平城真也に勧められた“せんとう”という風呂場らしい。まぁ、それはいい。

 何でリンがいる。
 何で一緒に風呂に入っている。
 何で、密着している。


「(一時思考停止中)」
「あ、の、カズマ、様」
「……リン」


 据え膳食わぬは男の恥。
 風呂場だろうが関係ない。挑発してきたヤツが悪い。
 最初にキスでもしてやろうと思ったら、俺にそっと抱きつくリン。完全に密着してしまった。そっと鎖骨を撫で上げるリンがリンでないような気さえしてくる。


「……え、と。
 カズマ様、えとあの、だ、だだ……う、やっぱり言えないぃ……!!」


 ぶくぶくと風呂に頭まで浸かるリン。やっと普段の調子に戻ったものだから、口にはしないが、少し安心した。


「リン、何があった」
「あ、うう。私、色気が欲しくて……!!」
「(まだそんなことを……それ以上魅惑的になったらこっちの身が持たない)」
「だから、あの……っ! か、カズマ様すみません!! あ、あがりまきゃあ!?」


 誰の入れ知恵かは知らないが、まぁいい。今の状況を楽しむとしよう。
 逃げようとしたリンの手を掴み、引き寄せて抱き締めてやった。栗色の濡れた髪に、柔らかなリンの肌が心地よく感じられる。


「……ここまでして、ただですむと思っていないな?」
「え、あの。私はただ色気を……!!」
「そんなに欲しいのなら、付けてやる」
「え……」
「お前はただ、俺だけを見ていればいい。任せろ」


 そっと、彼女のおでこに張り付いた髪を掻き分けて、キスしてやるだけでびくりと震える愛しい妻。ただただ彼女はじっと、震えながらも何処かしがみついているような様子は、小動物の様だった。


「リン、こっちを向け」
「……は、ずかしい……です」
「尚更、こちらを向け」
「あっ……!」


 顎に手をかけて、上を向かせたら、湯の熱さのせいか、ほのかに染まった頬に、潤んだ瞳が俺だけを見上げ、真っ赤な艶のある唇がポカンとあいていた。
 やはり、スキがありすぎる。

 その唇に軽く、唇を重ねてやるだけで、ギュッと目をつぶるリンはやっぱり可愛い。もっともっともっと、可愛いリンが見たくて見たくてたまらなくて、バスタオルを外して、直に脇下から胸に掛けてを撫でる様に愛撫しながら、後頭部をおさえて、息もままならない程の長いキスをしたり、時折唇を噛んだり、舌先を尖らせ、リンの口内にある舌と絡めさせたりした。


「うっ、ん……はふぅ……!!」


 満たされる。だけど、まだまだ足りない。
 リンの小さな艶のある赤い唇からは、甘い吐息、甘い声が漏れる。それが聞こえただけで背筋からゾクゾクと何かが駆け上がり、目の前の愛しい女を更に求めてしまう。

 もう我慢の限界だ。
 リンを温泉の縁にでも座らせて、最後までしてしまおうと決意した瞬間、リンがうめき声を出した。


「……リン?」
「だ、いすき……です……かずまさ、ま……」


 トロンとした瞳で、そう呟いた瞬間、ぐったりと俺の腕の中で気絶したリン。

 このお預けにされた気持ちに狂おしい程の愛しさ、どこにぶつけたらいいんだ。


「…………色気など、いらん」


 お前は十分、魅力的だ。



▽オマケ△


 そっと、私はリンさんに手を伸ばして、頬から髪をくしゃりと撫で上げた。


「……可愛いよ、リン」
「え、あ、沙弥さ、きゃっ!?」


 そっとリンさんを押し倒して、頬から首筋に、首筋から鎖骨へとゆっくりゆっくり焦らすように撫でてやると、くすぐったそうに身をよじらせる。そして私はリンさんの耳元まで顔を寄せて、囁いた。


「愛してる」
「ひゃあ……!?」

「とまぁ、できるだけ密着して見える肌を触れるか否かでさすりながらありのままの気持ちを、まぁ出来れば愛してるとか好きってハッキリつたえたら、それなりに色気付くんじゃない? ……って、リンさーん? ……やべぇ気絶しとる殿下さんに殺される」


 オワレ。




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