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「……どうした?」


鞄から大量の本と教科書とノートを取り出す私を見て、不思議そうな顔をする。


「どうしたって、勉強するの!勉強!」


“あとは、アルバートさんは私が勉強を頑張ってるとたまになでなでしてくれます!” 


ミリアムはこう言っていた。
今度こそ、ヒトシさんはなでなでしてくれるはず。


私は本を開くふりをしてヒトシさんを見る。
するとヒトシさんは、帰ってきたばかりだというのに、車の鍵を手にして私に背を向けているところだった。


「……何してんの?」
「え?だって、勉強するんだろ?邪魔しちゃ悪いから、二時間くらい暇潰してこようと」
「なっ……!」


ヒトシさんは、鈍感を通り越しているんじゃないかとたまに思う。
何で、何でそうなるの!?


私は家を出ようとするヒトシさんの背中に、慌てて叫ぶ。


「ちょ──ヒトシさん!!」


こうなったら、最後の手段だ。
これだけは使いたくなかったけど、仕方ない。


「ヒトシさん……えっと……」
「ん?」
「……ヒトシさん、だ……だ……」


“あと……アルバートさんは、私がだいすきですって言うと、いっぱいなでなでしてくれます!”


とびっきりの笑顔でミリアムは言ったんだ。
あれが嘘なわけない。

だから、言うのよ、妃芽。
ヒトシさんに、だいすきですって──!


「だ……だっ……」
「だ?」
「〜〜〜っ、」


私は察しもしないヒトシさんに腹が立って、


「ひっ……ヒトシさんのダメ男ーーー!!!!」


恥ずかしいのを必死で誤魔化しながらそう叫んでいたのだった。


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