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でもいい。
まだ策はある。
私はすたすたと部屋のなかに入っていく。
私のあとに部屋に入ったヒトシさんは、部屋を見て小さく声をあげた。
「おっ……」
「どう!?私がやったのよ!?」
驚かないわけがない。
ヒトシさんが帰ってくる前に、私はこの家の掃除をしたのだ。
そこら中ピカピカ。
自分でもうっとりするような出来だった。
“あとは、お掃除とかお料理とか、家事を頑張ると誉めてくれてなでなでしてくれます!”
料理は苦手だけど掃除は好きだから、今度こそ完璧なはず。
私は仁王立ちでヒトシさんの反応を待った。
さぁ、なでなでしながら誉めなさい!
「そっか、ありがとなー」
……ん?
私はそう言いながら椅子に座ろうとするヒトシさんを睨み付ける。
「……は?他に、ないの?」
「他に?……あー……、“お疲れさま”?」
ヒトシさんは眉を潜めながら言う。
──そうじゃない!!
私は怒りのあまりに震えそうになるのを我慢して、次の作戦に入った。
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