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「あ、やばい。ガソリンない」
突然、私を誘拐した宇宙人――ハルカがつぶやいた。
地球を出発して一ヶ月ほど経った日のことである。
最初はアトラクションのようにしか見えなかった宇宙の景色には、かなり慣れてきた。
そして、ハルカの宇宙船はすごく居心地のいい空間で、私は何不自由なく生活していた。
外の景色以外、『宇宙にいる』という感覚はないほど。
二人それぞれの部屋が確保されているのを不思議に思って、ハルカに尋ねたことがある。
『普通は、よその惑星の調査は二人一組で行くんだ。だから宇宙船も二人乗り仕様。でも地球はすごい辺境の田舎惑星だからね、俺一人で十分って言われて』
『辺境…田舎……なんかちょっと屈辱なんだけど』
『どこの銀河連合にも属してない時点で、辺境扱いされてもしかたないよ。ただ、連合に属してないのにあれだけ科学が進歩してる惑星は、ちょっと他にないかな』
『ギンガレンゴウ…』
『地球でいうEUみたいな……ちょっと違うかな?まあ、惑星を都市としたら、銀河連合は国みたいなかんじかな』
『わかった!銀河帝国みたいなやつね!?ベイダー的な人が支配して…』
『あんなのはいない』
そこでまたひとつ、私の夢は砕けたのだけれど、それは置いておく。
話を元に戻そう。
ガソリンがない、とハルカが突然言うので、私は慌てた。
「なっ!普通、行き帰りのガソリンはちゃんと計算して出発するもんでしょ!?」
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