▼ ヘタレの孝太郎
私の恋人の孝太郎は、背もそれなりに高くて、太りすぎてもいなければ痩せすぎてもいないし、笑顔はわりとかわいくて、顔自体もそこそこ整っている。
だけど私は、あまりに他人にこのひとを紹介したくない。
もし他人とこのひとを会わせようものなら…
まず、「よろしく」と言って相手に手を差し出した瞬間、その手に持っていたジュースのペットボトルを落とす。
「うわあああごめんなさいごめんなさい!ジュースかかってませんか!?あっ、穴が…うわああ漏れてるどうしよううわあああ!」
大の男が地面にはいつくばって悲鳴をあげる。
そして代わりのジュースを買いに自販機へと向かうものの、すぐに半泣きでこちらへ走ってくる。
「うわあああああっ!たっ助けてえーーー!!!い、犬っ!犬があああっ!」
孝太郎の背後には大型犬。
そしてぽかんとしている私たちの側を駆け抜け、数分ほどして戻って来たとき、孝太郎はどろどろに服を汚している。
「う、うう〜…怖かった…!」
半泣きどころか、べそをかいている。
―――そういう類の展開に、必ずと言っていいほど、なるからだ。
つまり私の恋人は、ドジでヘタレなのである。
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