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私は深呼吸をして、裏口から倉庫に潜入した。
なんだか、妙に静かだ。
姿勢を低くして中を進むと、ふいに、頭上に影がさした。
「きゃああああああっっ!!!」
ハサミを振り回して暴れると、
「わっ、ミズキ!何してんの」
ハルカの声だった。
顔を上げる。
ハルカが、驚いたような表情で立っていた。
「ハ、ハルカあ〜〜!」
私はへなへなと崩れ落ちる。
「ミズキ、もしかして助けに来てくれたのか?」
「うん。…あっ、あいつらは!?」
私はハッとして倉庫を見回す。
すると、向こうに、二人の男が情けなく転がっていた。
「……ハルカが、やっつけちゃったの?」
「まあね、さっき外ですごい音がした時に、あいつらの隙をついて、後ろから…」
「なんだあ…、ほんとに大丈夫だったんだ…」
腕も縛られてたはずなのに、縄抜けまでできるみたい。
私が複雑な気持ちでため息をつくと、ハルカはにこっと笑った。
「そんなことないよ。さっきの音、ミズキがやったんだろ?おかげで助かったんだよ、ありがとう」
タイミングよく鳴った音と、現れた私に、ハルカは状況を察したようだった。
「そ、そんなことないよ…」
なんだか照れる。
それに、あっさり男たちをのしてしまえるハルカを、ちょっとだけ、かっこいいと思ってしまった。
「やっぱ俺たち、いいコンビだなあ!」
ハルカが笑う。
うん、まあ、そうかもしれない。
そう思わなくも、ない。
ハルカは私の手をとった。
「警察に通報したから、もうすぐあいつらはお縄になるよ。尋問とか面倒だから、さっさと逃げちゃおう」
「…うん!」
私たちは手をつないで、元来た道を走った。
祭はちょっとしか楽しめなかったけど、なんだか気分がいいから、いいや。
end
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