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車に戻り、私は途方に暮れた。
透明インクの効果は30分ほどだったらしい。
『この星から逃げろ』って言ったって…。
運転の仕方は、ナビゲーションシステムがついてると前にハルカから聞いていた。目的地までのほとんどは自動操縦らしいし。
だけど、ハルカを置いて逃げるなんてできない。
『大丈夫』なんて、あんないかつい二人組を相手に、何を馬鹿なことを。
かと言って、ハルカがいない今、私には宇宙人とのコミュニケーション手段がない。だから助けも呼べない。
彼の言葉を思い出す。
『後で発信機で探すから』
と、いうことは。
こちらからもハルカの居場所を探せるんじゃ…。
私は車のいろんなボタンを押しまくる。
すると、地図らしきものが出てきて、その中の倉庫らしき場所に、緑の光が点滅していた。
「これだ、たぶん…!」
急いでデータをプリントする。
私はハルカのみたいな携帯用コンピューターを持っていないから、転送なんかもできなくて、アナログだ。
早く行かなくちゃ。ここから移動してしまったら見つけられなくなる。
武器になるものを探す。
ハサミしかない。とりあえず鞄に入れた。
私が地球から持ってきたものは…何かなかっただろうか。
私の部屋をひっくり返す。
出発のとき、退屈してはいけないと、けっこういろんなものを持って来たのだ。
実際、退屈なんかしなかったけれど。
「……これだ!」
私は、花火セットを発見した。
なぜこんなものを持って来たのかと言うと、部屋に置いていたこの花火セットに、ハルカが興味を示したからだった。
『これは花火よ』
『ハナビ?』
『綺麗なの。じゃあこれも持ってくから、今度やろうよ』
そう言ったきり、忘れていたけれど。
ハルカ、グッジョブだわ!
私は花火セットを掴んで、車から駆け出した。
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