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もしかすると、最初に逢った瞬間に、アタマを侵略されていたのかもしれない。
でも、なかなかロマンチックな『誘拐』だと思う。
宇宙人にヒトメボレされて誘拐される、なんて。
結局、私は自分の部屋に『宇宙に行ってきます。心配しないでね。いつか里帰りします』と書き置きを残して行った。
日記はやっぱり読まれたくないから、持って行く。
やっぱりこれは、『誘拐』じゃないかもしれない。
車のような宇宙船に乗り込むと、中はびっくりするくらい広かった。
「何日も銀河を渡るからな。ひととおり生活できるようになってるんだよ」
わくわくする。
夢みたい、でも現実。
それがすごく楽しくてしょうがない。
さあ出発だ、と宇宙人がエンジンをかける。そして、ふいに私の頬を軽くなでて、言った。
「俺の星に着くまでに、結婚の覚悟を決めといてよ?」
「けっ……!?」
楽しみ、だけではないようだ。
この宇宙旅行で、私はこの宇宙人に、ココロまで侵略されてしまうのだろうか。
わくわくとドキドキ怖さと、ちょっとだけのときめき。
そんな気持ちで溢れそうになりながら、遠ざかっていく街を見ると、まるで宇宙人の髪の毛みたいに、キラキラと光っていた。
end
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