小話 | ナノ


▼ 

もしかすると、最初に逢った瞬間に、アタマを侵略されていたのかもしれない。


でも、なかなかロマンチックな『誘拐』だと思う。

宇宙人にヒトメボレされて誘拐される、なんて。



結局、私は自分の部屋に『宇宙に行ってきます。心配しないでね。いつか里帰りします』と書き置きを残して行った。

日記はやっぱり読まれたくないから、持って行く。


やっぱりこれは、『誘拐』じゃないかもしれない。




車のような宇宙船に乗り込むと、中はびっくりするくらい広かった。

「何日も銀河を渡るからな。ひととおり生活できるようになってるんだよ」

わくわくする。

夢みたい、でも現実。
それがすごく楽しくてしょうがない。


さあ出発だ、と宇宙人がエンジンをかける。そして、ふいに私の頬を軽くなでて、言った。

「俺の星に着くまでに、結婚の覚悟を決めといてよ?」

「けっ……!?」

楽しみ、だけではないようだ。

この宇宙旅行で、私はこの宇宙人に、ココロまで侵略されてしまうのだろうか。


わくわくとドキドキ怖さと、ちょっとだけのときめき。


そんな気持ちで溢れそうになりながら、遠ざかっていく街を見ると、まるで宇宙人の髪の毛みたいに、キラキラと光っていた。




end





prev / next
(3/3)

[ back/top ]




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -