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目を開けると、輝く星空が、いつもよりずっと近くに広がっていた。
「わあああっ!綺麗!」
友達が何人か、彼氏に車で連れてってもらったなんて自慢してたから、悔しかったのだ。
近くに住んでるのに、一度も来たことがなかったから。
「あなたの星は、どこにあるの?」
「ここからは見えないよ」
「すごく遠いのね。どうして地球に?」
私が尋ねると、宇宙人はポケットから小さな機械を取り出した。
「正体を隠して現地調査をしてたんだ。なかなかおもしろかった」
ここに地球の情報がつまってるんだよ、と彼は機械をコツコツとたたく。
私は、首を傾げた。
「正体を隠して?私には最初に『宇宙人だ』って言ったじゃない」
すると宇宙人は、少し考えてから笑顔で答えた。
「う〜ん、君を星に連れて帰りたくなっちゃったからかな?」
「ええっ!?なんで!?実験体として!?」
さすがに少し危機感を覚えて後ずさる。
だけど宇宙人は「あははっ」と笑い飛ばした。
「違うよ。えっと、確か地球人も恋に落ちるのに理由はいらなかったはずだけど……そう、あれだ『ヒトメボレ』!」
「えっ!」
思いもかけないことばに、目をぱちくりさせることしかできない。
今、告白された?
宇宙人に?
その宇宙人は、さりげなく私の手をとって、笑顔で尋ねた。
「どう?フォースも使えないし、自転車は飛ばないし、映画みたいにドキドキするかはわかんないけど、宇宙旅行、してみる気、ある?」
まるで、ちょっとした散歩に誘うみたいな口調だけど、このひとは、事の重大さをわかっているんだろうか。
例えば私がいきなり地球から消えてしまったら、警察沙汰になってしまう。
それに、家族や友達は心配するだろうし、いろいろと途中で投げ出したままいなくなっちゃえば迷惑もかけるし。
それに、ほら、日記とか、見られてしまうかもしれないし。
――なのに、私は気付けば、勢いよく答えていた。
「行きたいっ!」
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