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いつか、遠い遠いところへ、長い長い旅をしてみたいと思っていた―――。
河原に、光る物体を見つけて近寄ると、車のような何かだった。
目をこらしていると、中から男が出てきた。
髪の毛が、車と同じようにキラキラと光っている。
「こんばんは。あの、髪の毛、光ってますよ?」
私が話しかけると、髪が光る男は、にこっと笑った。
「俺、宇宙人だから」
私は大興奮した。
「じゃあ、自転車で空飛べるの!?フォースが使える!?」
男につめよると、彼は一瞬きょとんとしてから、笑った。
「映画に影響されまくってるなあ。フォースは宇宙人だからって使えるものじゃないだろ?」
私はますます驚嘆した。
「わあっ!なんでそんな詳しいの!?」
「地球のことを調べたときに。超有名映画だから」
「えっとえっと、じゃあつまり自転車で飛ぶことはできるのね?」
「なんでそうなるんだ。あんなカゴにのれるようなサイズじゃない」
「じゃあ車で過去や未来に…」
「それは宇宙人じゃなくて科学者がやったことだろ?」
「じゃあ、I'll be backって…」
「俺は機械仕掛けじゃない。生身だ」
ひとしきり私の夢を砕いてから、宇宙人は思い出したように言った。
「ああ、でもあれだ、君の好きそうなことで言ったら、テレポートはできるよ」
「えっ!?ほんとに!?すごいすごいすごいっっ!!!!!!」
飛び上がって感動すると、宇宙人は軽く頭をかいた。
「地球人はこんな簡単に見知らぬ相手を信じる種族じゃなかったはずだけど……まあいいや、どこへ飛びたい?」
「連れてってくれるの!?じゃあねじゃあね、あの山のてっぺん!星がよく見えるんだって」
近くの小さい山を指差す。
「あんな近くでいいのか?もっとよく見えるとこにも連れてけるけど」
「いいの、あそこに行ってみたかったの!」
すると、宇宙人は「そっか」と言って、私に一歩近づいた。
彼の手が、私の目を覆う。
「じゃ、行こうか」
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