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3.親友のゆかり
私の親友であるゆかりは、砂糖菓子のような女の子である。
そして、イケメンの彼氏がいる。
そんなゆかりと、お茶をした。
「彼のいちばんになりたいって思うのって、わがままなのかなあ……?」
彼氏とは順調だと思っていたゆかりの口から、意外すぎる言葉が飛び出した。
「わがままじゃないでしょ。だって彼女でしょ?むしろいちばんじゃない方がおかしい」
「ん、でも……」
「何、ゆかりより好きな子がいるっていうんじゃないよね?それ、悪いけど別れろって言いたくなるよ?」
「えーと、そうだな、私は7番目くらいかなあ?」
「はあッッッ!?」
大きな声をあげてしまい、慌てて周囲を見回す。
動揺を隠せない私とは対照的に、ゆかりは平然と、指を折り始めた。
「ハルカ、ぷらむ、春蘭、それから……」
待て。なんだその、源氏名のような響きは。まさかその手のお店の女の子なのか。
行くなとは言わない。が、彼女よりもその女の子たちを愛し、あまつさえ彼女にそれを公言しているのだとしたら、最低きわまりない。
「それから、」
ゆかりは指をもう一本ずつ折り曲げていく。
「都少佐に、プリンセスエトワール、それと、ゆーりんちぃ」
「ゆーりんちぃ!!!???」
目玉が飛び出そうになった。
「ちょっと待って、それ、人間?」
源氏名とかそういうレベルではない。
ゆーりんちぃ?
「あのね、よく知らないんだけど、アニメのキャラクターなんだって」
「…………ああ」
ゆかりの言葉に納得――いや、してはいけない。
「それが?ゆかりよりも好きだって?」
「んー、て言うか、私よりもアニメが好きなんだよね、彼、きっと。で、彼の『俺の嫁ランキング』?とかいうのが今の子たち」
「…………はあ」
「その子たちよりも彼に好かれたい、って、やっぱりわがまま?」
「…………」
パフェが溶けてしまったではないか。
黙って食べてりゃよかった。
「わがままっていうか、あんた、アホ」
「えっ」
「彼氏はバカ」
「そ、そんな!彼はたしかにちょっとオタクだけど、そんな、」
「お似合いだわ。結婚しろ」
「ええっ!?」
今までの人生で、もっともくだらない恋愛相談だったのは、間違いない。
最終的に、『三次元ではゆかりが一番だよ』と言われていたことが発覚し、私はスティックシュガーを三本、ゆかりのコーヒーにぶちこんだ。
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