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一方的な謎掛けに答えが出せないまま、一週間が経った。

何となく気味が悪いと思いながらも、答えを探すことに必然性を感じなかったからほとんど放置していた、というせいもある。


仕事で調べ物をしていて、辞書を開いた。

その時、なんとなく気まぐれで『梔子』を調べてみることにした。


「和名の由来か」

和名の由来となった説がふたつ、紹介されていた。

そのうちのひとつが――


「果実が熟しても割れないことから……『口無し』という和名の……」


思わず辞書を取り落とした。


梔子。

クチナシ。

口無し。



いや、まさか。そんなはずはない。



その時、呼び鈴が鳴り、配達人によって僕宛ての小包が渡された。

「また同じ方からですねえ」


スズキからの、小包。

梔子の花と、短い手紙。


震える手で封筒を開ける。


『言い忘れていたよ。亡くなった友人にでも、供えてやるといい。本当におめでとう、よかったな』


辞書の時とと同じように、便箋も床に落ちる。

軽い一枚の紙は、ふわりと宙を舞い、音もたてずに床に着地した。



「死人に、口無し……」


確かに酷いセンスのギャグだ。


「この男は――秘密をふたつ、知っている」



姿の見えない人間を殺すには、どうすればいい。

平和で満たされた人生を取り戻すには、どうすればいい。


震える手で、僕はスズキに返事を書いた。



『送られた花のひとつをあなたの墓前にも供えさせていただきたいのですが、あらかじめあなたの菩提寺を教えておいていただけますか?』



――手紙を読んだ、顔も知らない男がほくそ笑む様が、鮮明に脳裏に浮かび上がった。

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