▼ キャンディとかくれんぼ
早瀬はかくれんぼが得意だ。
しょっちゅう姿をくらます垂氷を探し回るうちに、基本的に自分の目線より上は見つかりにくいと学習し、そんな場所へ登れるくらいに運動神経もあったからだ。
子ども相手のかくれんぼなら、それくらいで容易に勝ててしまう。(もちろん早瀬も子どもだが)
もうひとつの理由は、日夏だ。
負けず嫌いの日夏は「絶対最後まで見つからないんだから!」と意気込むのだが、あまりセンスはないようだった。
確かに日夏の性格上『隠れる』センスは期待できない。
ある時「早瀬なら絶対見つからない場所知ってるでしょ?」と協力を要請され、それから二人で隠れる習慣がついた。
日夏の『負けず嫌い』の対象に自分は入っていないのだとわかり、なんとなく自分が特別扱いされているような気がして、早瀬は嬉しくなった。
そんな日夏に絶好の隠れ場所を見つけてやれなければ、男がすたる。
だから早瀬は毎回必死で隠れ場所を模索し、その結果ますますかくれんぼが得意になったのだった。
日夏にいいところを見せたい、というのは大きい。
いつも最後まで見つからず、とくいげに仲間たちの前に現れ、二人で笑い合う瞬間がすごく嬉しい。日夏の相棒は自分だ、という気分になる。
それから、隠れている間は二人だけでいられることも、早瀬にとっては重要だった。
もちろん二人で遊ぶことだってある。
だが、仲間たちと遊んでいる中で、こうして二人だけになれる、というのが非常に魅力的だった。
最初から二人でいる時より、なんとなく日夏をひとりじめしているように思える。
二人だけのひみつ、という気がするからだろうか。
もっとも、日夏は『勝つ』ことしか頭にないようではあったが。
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