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▼ before PARTY

この状況は、

この状況は一体、何なのでしょう。


私は思わず、扉の隙間からその部屋をのぞき見してしまいました。

そこは主夫婦のために与えられた部屋。もちろんノックをすれば堂々と入室が可能です。

けれど、少し開いてちらりと見えた中の様子に、それは躊躇われたのです。



部屋にいるのは、高貴なたたずまいで立派な椅子に腰掛けたカズマ殿下。


そして――


その膝に腕を乗せ、自身は床に膝をついてカズマ殿下にしなだれかかるようなかっこうの、リンさま。



見たことのない光景に、私はごくりと喉を鳴らしました。



****



私たちがいるのはヴィンチェンツォのお屋敷。以前お世話になったカイン伯爵のお宅です。

カズマ殿下とリンさまが、ヴィンチェンツォのパーティーに招待を受けたのでした。


どうやって招待されたのか、どうやって屋敷に行けたのか、そういったことは深く追及しないでくださいませ。


とにかく、私たちは都合良……ではなくヴィンチェンツォの屋敷へと足を運んだのです。


『殿下、リン様。それにマリカさん、ようこそ!待ってたっすよ!はい、ウェルカムドリンクっす』


カイン伯爵のメイド・ツバキさんが出迎えてださり、背の高いグラスに入った綺麗な飲み物を手渡してくれました。


『カズマ殿下にはお酒、リン様にはジュースですよっ。後で会場にご案内するんで控え室でお待ちください!』


ツバキさんはとある一室にお二人を誘導すると、パーティーの支度があるのかいそいそとどこかへ行ってしまわれました。


『リンさま、上着、お脱ぎになります?グラスお持ちしてますわよ』

私は、リンさまの手からグラスを受け取りました。

リンさまは、少し躊躇ってから防寒用に着ていた上着のボタンを外していきます。


そして、カズマ殿下を見上げると、怖ず怖ずと尋ねました。

『カズマ様、あの……今日の私のドレス、おかしくないですか……?』


上着の前だけを開け、不安げな表情を見せるリンさまに、カズマ殿下は眉を潜めました。


『おかしくは、ない』


殿下がそれだけ答えると、リンさまはほっとした様子で上着を脱ぎ、あらためてご自身のドレスを見下ろします。


それを複雑そうな顔で眺めるカズマ殿下。


無理もありませんわ。

『王宮での晩餐会とは趣向を変えましょう!』と私が提案し、リンさまはいつも着ることのない黒いドレスをお召しになっていらっしゃるのですから。

それに、スカートもいつもより短めの膝丈。

私でも少しドキリとしてしまうくらい、いつもと違う雰囲気を漂わせたリンさまは、とっても魅力的です。

リンさまが一番、ご自身の格好に戸惑っていらっしゃるようですが。



リンさまにグラスをお返しした私は、使用人の方々にご挨拶をするため、一旦控え室を後にしたのでした。



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