▼
「やだなあ青山さん!このひとは友達のジローさん。レンアイ仲間ですよっ!こっちの女性は水原さん、ジローさんの彼女ですっ」
ニコニコと説明する宮田くんを押しのけ、青山さんはこちらの答えを待つ。
すると香奈さんが、冷静な声で言った。
「いえ、こちらの変態がそちらの変態と意気投合していただけです。不快でしたが迷惑というほどではありません。……むしろあなたに同情するわ」
最後の一言は、青山さんたちには聞こえなかったようだ。
「本当にすみませんでした。このひとは責任持って連れて帰ります。ほら、宮田さん帰りますよ!」
青山さんはここの代金を置いてから、再び宮田くんの腕をぐいぐいと引っ張った。
「ジローさん、またあそびましょうねー!」
引きずられながら、宮田くんが俺に手を振る。
「はい、俺もメールしますね!」
俺も手をあげて、それに応えた。
今日はなかなか楽しい日だった。
宮田くんという素敵な友達もできたし、青山さんは香奈さんに似てて和んだし、何より目の前には大好きな香奈さんがいるし。
合鍵やあんなことやこんなことは無理だけど、もうちょっと強気で頑張ってみようかな――なんて思って、少し笑う。
この気持ちさえ素直にぶつければ、きっと届く。
宮田くんの言うとおり、自分と香奈さんを信じてみよう、と思った。
嵐のように去っていった二人が見えなくなった時、ふいに香奈さんが低い声で言った。
「ねえ」
「はい?」
「………男なの?」
「え?」
「宮田くんの恋人」
「え、ああ、はい。青山修司さんって言って」
「…………」
「香奈さん何て顔してるんですか!恋愛に男も女もないですよ!」
「恋愛には男も女もなくていいわよ。私が信じられないのは、男にナースとかメイド服とかセーラー服のコスプレさせた合成写真作って喜んでる変態宮田よ!!!!!!!!!!」
「なっ…!香奈さん酷い!宮田くんの愛情表現をそんな風に!」
「近寄らないで!変態菌がうつる!」
「俺は合成写真なんか作ってないですよ!」
「同類でしょ!帰る!着いて来ないで!」
「あっ、香奈さーーーん!」
end
prev / next
(9/10)